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「蛇の道」のゆくえ

© 2024 CINEFRANCE STUDIOS - KADOKAWA CORPORATION - TARANTULA
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 哲学者のニーチェは、『ツァラトゥストラかく語りき』で、ツァラトゥストラが見たという次なる幻影を語っている。

 ある夜。とある断崖のほとりで、ツァラトゥストラは、若い羊飼いが苦しみのたうち回っているのを目撃する。口からは、重たげな黒い蛇が垂れている。

 ツァラトゥストラは、蛇を掴んで引っぱるが、一向に引きずり出すことができない。そこで彼は羊飼いに「嚙め。それを嚙め! 頭を嚙み切れ。嚙め!」と叫ぶ。
 
この声を聞いた羊飼いは、叫び通りに蛇の頭を嚙んで吐き出し、立ち上がった。

「もはや羊飼いではなかった。もはや人間ではなかった。変容した者、光に照らされた者だった。哄笑した。この地上でいまだかつてどんな人間も笑ったことがないほどに、高らかに笑った」(※)

 吉村は蛇の頭を嚙みちぎった。さて、小夜子はどうだろうか。

※ F.W.ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』佐々木中訳、中公文庫、2015年、p.274-275

(文・司馬宙)

【作品概要】

柴咲コウ ダミアン・ボナール
西島秀俊 青木崇高
マチュー・アマルリック グレゴワール・コラン
監督・脚本:黒沢清 原案:高橋洋『蛇の道』
音楽:二コラ・エレラ
製作:CINÉFRANCE STUDIOS、KADOKAWA プロデューサー:小寺剛雄
撮影:アレクシ・カビルシーヌ 編集:トマ・マルシャン
配給:KADOKAWA
2024年/113分/フランス・ベルギー・ルクセンブルク・日本/カラー
© 2024 CINEFRANCE STUDIOS – KADOKAWA CORPORATION – TARANTULA
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