鬼才ヨルゴス・ランティモス×エマ・ストーン
2人の才能が紡ぎ出す「現代の神話」
―さて、前置きがいささか長くなった。本作『哀れなるものたち』は、不条理な世界観を独自のスタイルで切り取るヨルゴス・ランティモス監督作品。原作はスコットランドの作家アラスター・グレイによる同名小説で、主演はエマ・ストーン。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したほか、アカデミー賞で作品賞や監督賞、主演女優賞など、11部門にノミネートされ、大きな話題を呼んだ。
舞台はヴィクトリア朝時代のロンドン。主人公のベラ(エマ・ストーン)は、成人の遺体に胎児の脳を移植された“生まれたての大人”の女性。天才外科医のゴッドウイン・バクスター(ウィレム・デフォー)が、川に身投げした妊婦を見つけ、フランケンシュタインよろしく蘇生させたのだ。
“身体は大人、頭脳は子ども”を地でいくベラは、常識はずれな行動を繰り返しながらも多くの知識を吸収していき、性的な快感も覚える。そして、そんな彼女の前に、ゴッドウインの助手マックス・マッキャンドレス(ラミー・ユセフ)が現れる。
マックスとの結婚をすすめるゴッドウイン。しかし、外の世界を夢見るベラは、首を縦に振らない。そして、弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘惑されたベラは、「世界を自分の目で見てみたい」と言い残し、冒険の旅に出るのだった―。