「女性の解放」というフェミニズム的なテーマ
本作には、遺体の解剖シーンや激しいセックスのシーンなど、かなり過激な描写が散見される。しかし、あまり猥雑さを感じないのは、本作の根底に、「女性の解放」というフェミニズム的なテーマが描かれていることが大きいだろう。
本能の赴くままに自由に生きるベラは、ダンカンと駆け落ちしたのち、彼との淫蕩に耽るようになる。そして、プレイボーイのダンカンは、自らの性欲のはけ口としてベラを連れまわす。つまり、ダンカンは、ベラの欲望を巧みに利用し、彼女を性的に搾取しているのだ。
こういった性的搾取は、パリに拠点を移してからよりはっきりと描かれる。無一文になったベラは、自らを捨てたダンカンと別れ、セックスワーカーとして娼館で働き始める。ここで描かれるのは、女性の貧困を口実とした性的搾取の構造だ。
しかし、彼女もこうした自身の境遇を甘んじて受け入れているわけではない。むしろ、こうした男性優位の社会の歪さに気づき、その都度アクションを起こしている。例えば、セックスワーカーとして生理的に合わない男性に身を委ねなければならなくなったベラは、娼館の女主人のスワイニー(キャスリン・ハンター)に、客が女を選ぶべきだ、と主張する。
そして、こういった女性差別の最たるものが、終盤の「クリトリス切除(FGM)」だろう。クリトリスは古来より女性の性的快楽と結び付けられることが多く、現在でもアフリカなどで切除が行われており国際問題になっている。