“女性版フランケンシュタイン”による復讐
作中では、彼女は、自身の身体と性的欲求を守るため、クリトリスの切除に断固として反対するシーンがある。そして、彼女は最終的にとある人物への「復讐」を果たす。つまり、作中で彼女は、トライアンドエラーを繰り返す中で、自らの生き方を見つけ出していくのだ。
ランティモスは、2009年に『籠の中の少女』という作品を制作している。同作は、外界から閉ざされた邸宅(籠)の中で暮らす子どもたちの姿を描いた作品で、家族の父親は、作中では、子どもたちの性の発露と倒錯が克明に描かれる。ベラは、籠から放たれた彼女たちの姿を描いているといってもよいかもしれない。
また、本作は、『フランケンシュタイン』を、転倒したような話になっている(ウィレム・デフォー演じる“創造主”ゴッドウインがフランケンシュタインそっくりなのは、なんとも皮肉だ)。
フランケンシュタインの作者であるメアリー・シェリーの母親は、フェミニズムの創始者と言われるメアリー・ウルストンクラフトであり、1795年に投身自殺を図っている。つまり、『哀れなるものたち』は、ウルストンクラフトとシェリーの物語でもあるのだ。