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ドラッグまみれの狂った青春映画―演出の魅力

映画『トレインスポッティング』のキャスト&スタッフ
映画『トレインスポッティング』のキャスト&スタッフ【getty Images】

 1990年代中盤、「クール・ブリタニア」と呼ばれる英国発のムーブメントが世界を席巻した。60年代のポップカルチャーブーム「スウィンギング・ロンドン」のルネサンスとして知られるこのムーブメントは、ロックバンドのオアシスや、現代美術家のダミアン・ハーストなど、世界に名だたるクリエイターたちを多数輩出した。そんなムーブメントの口火を切った作品が、この『トレインスポッティング』だ。

 本作は、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)でアカデミー賞作品賞を受賞したイギリスの国民的映画監督ダニー・ボイルによる青春映画。原作はスコットランド出身の小説家アーヴィン・ウェルシュの同名小説で、主人公のレントンを当時まだ駆け出しだったユアン・マクレガーが演じる。

「人生で何を選ぶ?(Choose life, choose a job)」。冒頭、万引きの追っ手から逃げるレントンたちは観客に向かってそう問いかける。出世や家族、大型テレビ…、こういったさまざまなものが並ぶ中で、彼らが選ぶのはただ1つ。「ヘロイン」だ。

 本作のタイトルにもなった「トレインスポッティング(Trainspotting)」は、「電車を見る鉄道マニア」を意味する隠語で、転じて「時間を浪費すること」を意味すると言われている。このタイトルどおり、本作の登場人物たちの関心は現実世界にはない。彼らは、「人生は死ぬまでのヒマつぶし」と言わんばかりにひたすらドラッグに興じ、現実から逃避する。汚物と快楽にまみれた彼らの人生は、あまりにも刹那的で胸が苦しくなる。

 しかし、作中では、肥溜めの中にいるような彼らの人生が、パステルカラーを基調としたポップでスタイリッシュな映像で表現されている。退廃的なストーリーとアーティスティックな映像。このギャップこそ本作の最大の魅力なのだ。

 なお、彼らのその後は、本作の20年後に公開された『T2 トレインスポッティング』(2017)で観ることができる。本作のラストで「足を洗ってカタギの暮らしをする」と語っていたレントン。彼は一体どのような人生を選び取ったのか、本作と併せてご覧いただきたい。

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