ブリットポップのケミカルな疾走感ー音楽の魅力
本作を傑作たらしめたもう1つの要素。それは、作中に散りばめられた疾走感抜群のブリットポップ(イギリスのポップ音楽)だ。
まず、本作の幕開けを飾るのは、“ゴッドファーザー・オブ・パンク“の異名で知られるミュージシャン、イギー・ポップの「Lust for Life」。「ジョニー・イェンがまた来やがった 薬と酒でキマったままで」からはじまるこの曲は、退廃的な本作の世界観に見事に合致しているとともに、激しいドラムの音色とイギーの甘い音色が観客の高揚感をこれでもかと掻き立てている。まさに本作の幕開けにふさわしい一曲といえるだろう。
なお、イギーの曲はもう1曲登場する。レントンたちの盗みのシーンで流れる「Nightclubbing」だ。なおイギーは、トミーの一押しミュージシャンとして作中の会話にも登場する。彼自身一時期は薬物中毒に陥っていただけに、本作の裏の主人公といえるかもしれない。
本作を語る上で外せないアーティストがもう1組いる。それが、アンダーワールドだ。
アンダーワールドは、1988年にロンドンで結成されたロックバンド。1993年にアルバムデビューを果たして以来、その斬新な音楽で世界のダンスミュージックシーンに多大な影響を与えてきた。
特に本作の代名詞ともなっている「Born Slippy」は、ディレイのかかった開放感あふれるシンセコードとドラッギーで中毒性のある四つ打ちのビートで、レントンたちのトリップ感覚を曲だけで表現している。
なお、解放感といえば、「スコットランドで最悪のトイレ」で流れるトロピカルな音楽も忘れてはならない。この曲は、アンビエントミュージックの大家ブライアン・イーノによる「Deep Blue Day」で、神秘的でサイケデリックなドローン(持続音)がレントンの快楽を表現している。
【関連記事】
映画「時計じかけのオレンジ」気持ち悪いけどクセになる史上屈指のカルト映画。実はコメディ?<あらすじ 考察 解説 評価>
映画「2001年宇宙の旅」”SFの金字塔”はどこが凄いのか?<あらすじ 考察 解説 評価 レビュー>
原作とどこが違う…? 主人公はなぜ狂った? 映画『シャイニング』徹底考察。なぜ人気? 双子の正体、血の洪水の意味も解説