衝撃的なラストにしばし呆然
また本作では、テディベアとユニコーンとの闘いで描かれる分断だけでなく、テディベアたちの生い立ちも描くことで家族内での不和や不寛容という身近な分断も細やかに描いている。
“平和な神の楽園”を巡って戦争が起こるというストーリーは、現在進行形で起きているガザ紛争を想起させ、擬人化したかわいいテディベアが、殺戮を繰り返していくその様は、否が応でも、人間である我々の心を突き刺していく。
バスケスは、「製作するにあたり、『地獄の黙示録』や『プラトーン』などの戦争の悲惨さを描いた映画を観賞し、キャラクターは『バンビ』を意識した。そして聖書については何度も言及している。
異なる要素が混じり合い、素晴らしい化学反応が作り出されている。テディベアにとって自分たちの宗教と道徳的な葛藤があり、狂信的な考えがどのように戦争拡大に影響するかがリアルに描かれている。
アスリンはその後、ユニコーンとの戦いで、顔面の半分を失うが、その勇気が称えられ、中尉に昇進し、兵士たちを鼓舞する英雄となる。彼は、顔を覆うマスクを着けて生きていくことになる。
力を持ったアスリンは、クーデターを起こし、軍指導者らを殺害した上で、ユニコーンとの最終決戦のための軍隊を組み、森へと向かう。
テディベアとユニコーンとの苛烈な聖戦が終わる。死んだはずのユニコーンが変異し、黒く巨大な生物と化し、そこに、テディベアとユニコーンの対立には関わらず、森で平和に暮らしていたサルたちが、それについていくというラストシーンで、物語は終わる。
ユニコーンが変異した動物とは何か…。思わず、全身を戦慄が走る。
数多くの戦争映画を研究したと語るバスケスだが、それらを凌ぐ、残酷かつ現実味を帯びる結末だ。
92分という、比較的短尺の作品だが、アニメーションであることを生かしたバイオレンス描写やテンポの良さで、思わず引き込まれる。そして、予想だにしない結末に、しばし呆然とさせられる作品だ。
【作品概要】
原題:Unicorn Wars
翻訳:堀江真理
監督:アルベルト・バスケス
提供:リスキット、チームジョイ、トムス・エンタテインメント
配給:リスキット
宣伝:プリマステラ
協力:インスティトゥト・セルバンテス東京
2022年/スペイン・フランス/92分/カラー/2K/ビスタ/5.1ch/スペイン語/日本語字幕/PG12
©2022 Unicorn Wars
公式HP
公式X:@unicornwars_jp