ビョンスと女たちの関係
第2章から4章では、アパートの2階から4階へと一階ずつ上に、まさにタイトル『WALK UP』の通りに舞台を移しながら、ビョンスと女たちの関係が映し出されていく。
2章では、へオクと再会したビョンスが、シェフのソニ(ソン・ソンミ)を交えて2階で酒を酌み交わす。入店直後、3人は階段下に固定されたカメラからは見えない画面外で会話をはじめる。ジュールと同様に声から映画に登場したソニが画面内に現れると、話題はビョンスの映画へと移る。
なぜかソニは、どの作品のどこが好きかをへオクにいくら問い詰められても、全ての質問を頑なに無視し続け、どうやって彼の映画を観ているのかという、作品の内容よりも見方と関わる「画面外」の話題のみを語り続ける。
それに応えるようにビョンスもまた、画面外の制作環境と関わる出資について愚痴をこぼす。そこから話題は画面外のジョンスが仕事をすぐに辞めたことへと移るが、通常の映画ならば画面に収められるはずの辞職前後のやり取りは決して画面内に現れることがない。その後、へオクが酒を取りに地下に移動すると2人だけが画面内に取り残され、何やら怪しげな空気が漂い出す。
ベランダでのビョンスとへオクのやりとりを最後に舞台が3階に移ると、続くエピソードでは皿洗いをしている彼の元に、なぜかソニが帰宅してくる。前の場面からは再び時間が経過し、どうやら2人は交際しているようだ。
体調を崩しベジタリアンとなり、ついには酒すらも飲まなくなったここでのビョンスは、紙ではなく電子タバコを吸っており、さすがにこの人物は先ほどまで画面内にいたビョンスとは別人なのではないか、という疑念が湧いてもくる。
2人の会話の話題はここでも、自身の回顧上映に関連する画面外、コロナのワクチンや費用に関するあれこれに終始し、さらに2人は、ソニが画面外の友人に会いにいくかどうかで揉め続ける。ここでは、特に修正を施されていないからなのか、画面外の屋外に響くコロナ禍の日々を嫌でも思い起こさせるサイレンの音が印象的に鳴り続けもする。