ジョニーデップ版とは別物…毒っけなしの展開に賛否? 映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』評価&考察。歌唱曲も解説
大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』に登場した工場長ウィリー・ウォンカの若かりし頃を描く映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が公開中だ。主演を務めたのはティモシー・シャラメ。『チャーリー〜』と比較しつつ、本作の魅力を紐解くレビューをお届けする(文・吉田健二)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価>
充実した楽曲たち…見どころ満載“おもちゃ箱映画”
本作は見どころがずっしりと詰まったおもちゃ箱をひっくり返したような映画だ。
主役のウィリー・ウォンカを演じるのは『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)や、『君の名前で僕を呼んで』(2017)などで知られるティモシー・シャラメ。
彼が演じる若きウィリー・ウォンカがオープニングで披露する楽曲「A Hatful ofDreams(原題)」や、主題歌の「ピュア・イマジネーション」がとにかく素晴らしい。
他にも、宿の地下ランドリー工場にて違法労働を強いられている孤児の少女ヌードルや、会計士アバカス、コメディアンのラリー、電話交換手ロッティー、配管工のパイパーが歌う『Scrub Scrub(原題)』には胸が締め付けられた。
その他にも、俳優ヒュー・グラント演じるウンパルンパが歌う『Oompa Loompa(原題)』など、楽曲の充実ぶりは映画『チャーリーとチョコレート工場』(2005)にも勝るとも劣らない。
画面を華やかに彩る数々のチョコレートにも注目だ。食べると宙に浮く「ホバーチョコ」に、希望の光を見出す「ひとすじの光」、歌って踊り出してしまう「ブロードウェイ・ショー」など、個性豊かなチョコレートは、観ているだけで至福をもたらしてくれる。
上映時間116分にこれでもかというほどぎっしり見どころが詰まっている本作だが、一つひとつのエピソードが充実しているがゆえ、ドラマシリーズにしたほうが個性豊かな登場人物たちを深掘りし、より豊かな作品なったように思える。しかし、それは贅沢すぎる不満だろう。
メガホンをとったのは、映画『パディントン』シリーズで名を馳せたポール・キング監督。『パディントン』と同様、どんなに意地悪なキャラクターが登場しても憎めない、チャーミングな人物に見せるその演出力は、映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でも遺憾なく発揮されている。