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邦画史上もっとも“意味深”なラストは? 余韻がスゴい結末(5)ほろ苦いけど幸せ…何度観ても素晴らしい傑作

text by シモ

あなたは映画に何を求めているだろうか? 突き詰めると心の変化を欲しているのではないだろうか。とりわけ、感情の整理がつかない、何とも曖昧な結末を迎える映画には、観る者の人生を変える力がある。そこで今回は、絶望と希望が合わさった不思議な結末の日本映画を、5本セレクトして紹介する。第5回。(文・シモ(下嶋恵樹))

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ほろ苦くも幸福感のあるラスト

『生きる』(1952)

黒澤明
黒澤明【Getty Images】

監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍、小國英雄
出演:志村喬、小田切みき、藤原釜足、日守新一、金子信雄

【作品内容】

 市役所の市民課長として、30年間無欠勤で働いてきた渡辺勘治(志村喬)。ある日、自分が癌であることを知らされた勘治は、亡くなる前に自分でできることはなにかを考える。

 それは、市民のための小公園の建設だった。

【注目ポイント】

 仕事への情熱を失い、膨大な書類の山に淡々と判を押すだけの無気力な生活を送る市民課長・渡辺勘治は、胃がんで余命幾ばくもないことを知り人生に絶望する。自暴自棄に陥った彼は、飲み屋で偶然知り合った小説家に、ダンスホールやストリップショー、パチンコなどを紹介されて巡るも、むなしさは晴らせない。

 しかし、元同僚の小田切とよ(小田切みき)に再会してから、変化が訪れる。勘治は彼女と何度か食事をしたり映画を観るなど、普通の生活を送るうちに、残された人生でやるべきことに気づかされるのだ。

 物語の終盤、完成した公園で、歌を歌いながらブランコをこぐ勘治の姿を映し出すシーンがある。勘治の歌声は、公園という形のあるものを作り上げた充足感に満ちている。その感覚を胸に、勘治はあの世へ旅立っていくのである。

 一方、勘治が亡くなったあと、残された公園で遊ぶ子供たちの声。その声は、現在進行形のほとばしる生を謳歌する歌声なのである。主演の志村喬による、喜怒哀楽をまなざしで表現する演技に、圧倒される。

 主人公の死を描いているという点ではほろ苦い結末ではあるが、主人公のまいた種が花開く、という点ではこの上なく幸福なラストシーンであると言えるだろう。

(文・シモ(下嶋恵樹))

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【了】

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