改変が天才的で原作超え…最も成功した「長編小説の映画化」(3)冴えない中年がイケオジに…完璧な配役とは?
長編小説はしばしば映画の原作になるが、長大な物語をおよそ2時間の尺に収めるためには、知恵がいる。映画化にあたり、成功の鍵を握るのは、そうした工夫にあると言っても過言ではないだろう。そこで今回は、長編小説の改変に成功した実写化映画を5本セレクトして紹介する。第3回。(文・ばやし)
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犯人像をイケオジにマイナーチェンジ
『容疑者Xの献身』(2008年)
監督:西谷弘
脚本:福田靖
出演:福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、渡辺いっけい、品川祐、真矢みき、松雪泰子、堤真一
【作品内容】
堤防で発見された男の遺体。捜査に乗り出した刑事の内海(柴咲コウ)は、被害者の元妻である花岡靖子(松雪泰子)へ聞き込みにあたるが、彼女には鉄壁のアリバイがあった。
内海は天才物理学者の湯川学(福山雅治)に協力を仰ぐが、彼らの前に立ち塞がったのは、かつて大学時代に湯川と親友でもあった天才数学者・石神(堤真一)だった。
【注目ポイント】
ベストセラー作家である東野圭吾の「ガリレオ」シリーズと言えば、福山雅治主演のもとドラマ化され、多くのファンを獲得した人気作品。そんな「ガリレオ」シリーズのなかでも屈指の人気を誇るエピソードが、第135回直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』だ。
誰が犯人か判明した状態で物語が進んでいく「倒叙ミステリー」の名作としても知られる本作は、想いを寄せる女性のために完全犯罪を企てた男の謎に、天才物理学者・湯川学が挑む。相対する男は、湯川とは帝都大学時代の同期であり、彼をもって「本物の天才」とその頭脳を認めるほどの友人だった数学者・石神。
映画化するにあたって、彼の人物造形には大きな変化が加えられている。原作では「ダルマ」という渾名をつけられるほどの体格で、頭髪が薄い老け顔のキャラクターとして描かれていたが、映画で石神を演じた堤真一は、陰鬱な雰囲気を醸しながらも哀愁漂う魅力的な男性に造形されている。
そして、石神と花岡親子との心の距離も原作より近く描かれており、娘が石神に手を振るシーンなどは映画化にあたって追加されたオリジナルシーンだ。
ちなみに、もともとドラマ版から湯川とコンビを組んでいた刑事の内海は、『容疑者Xの献身』が発刊された時点で未登場のオリジナルキャラクターだった。しかし、映像作品で「ガリレオ」シリーズを知った視聴者にとっては馴染み深い存在であり、のちに原作でも彼女は登場しているので、安心して小説のシリーズも読みすすめてほしい。
(文・ばやし)
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【了】