炎上どころか大絶賛…最も成功した少女漫画の実写化は?(1)期待を裏切らない面白さ…原作ファン称賛の理由は?
「こんな恋がしてみたい」と、世の女性たちの心をときめかせてきた“少女漫画”。実際にはありえないような夢物語も特徴の1つであり、実写化作品の失敗例は多く、まさに死屍累々である。しかし、中には原作ファンの心を掴むことに成功した作品も。今回は少女漫画の実写化を見事に成功させた映画を紹介する。第1回。(文・かんそう)
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原作の空気感を誠実に紡ぎだした珠玉の一本
『君に届け』(2010)
上映時間:128分
監督:熊澤尚人
原作:椎名軽穂
脚本:根津理香、熊澤尚人
キャスト:多部未華子、三浦春馬、蓮佛美沙子、桐谷美玲、夏菜、青山ハル、金井勇太、東亜優、近野成美、松山愛里
【作品内容】
誰よりも健気で純粋ながら、見た目が暗いことで周囲から「貞子」と呼ばれる女子高生の黒沼爽子(多部未華子)が、クラスの人気者・風早翔太(三浦春馬)の気さくな優しさに触れながら、徐々に打ち解けて変わっていく姿を描く青春ラブストーリー。
【注目ポイント】
出演は多部未華子、三浦春馬など。その見た目と雰囲気から学校で「貞子」と呼ばれ怖がられていた女子・黒沼爽子と、学校イチの人気者で爽やかから生まれてきたような男子・風早翔太の真っ直ぐすぎる恋愛を描いた作品『君に届け』。
原作では2人が初めて「手を繋ぐ」までに実に12巻、話数にして48話もの時間が費やされている。それをたった2時間にまとめる。それがどれだけ無謀なことなのかおわかりだろうか。どこまでも純粋なこの作品は、ある意味でどの少女漫画よりも「丁寧さ」が求められる。この実写版『君に届け』は、そんなファンの想いに応えた映画と言えるのではないだろうか。
主演を務めた多部未華子と三浦春馬の初々しさは、漫画「君に届け」の世界観とマッチし、なかなか関係は進展しないもどかしさと、それでも2人のペースで一歩ずつ、いや半歩ずつ、いや0.0005歩ずつ進む尊さを見事に再現していた。そして脇を固めるキャストも素晴らしい。
短気だが義理人情に厚い千鶴を蓮佛美沙子が、他人の心を慮ることのできるギャルのあやねを夏菜が、のんびりとした性格の龍を佐々木大介(旧・青山ハル)が、ガサツで適当だが自分の生徒のことを誰よりも理解している爽子たちの担任教師・ピンを井浦新(旧・ARATA)が、そして爽子の最大のライバルであるくるみを桐谷美玲が、それぞれ誠実に演じきっていた。
前述の通り2時間という制約上、「君に届け」の空気感すべてを描くことは不可能と言ってもいい。しかし、多少の改変はあれど、ガッカリさせられることも少なくない実写化において、この映画はとても「誠実」な作品だった。
【著者プロフィール:かんそう】
2014年から、はてなブログにてカルチャーブログ「kansou」を運営。記事数は1000超、累計5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務め、2024年5月に初書籍『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を出版した。
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