実話の方が恐ろしい…実在の殺人事件がモデルの映画(1)“世界でいちばん有名な死体”となった美女の真実とは?
実際の殺人事件を基に制作された洋画は、そのリアルなストーリーと描写で観る者に強烈な印象を残す。今回は、歴史に名を刻んだ事件を元に描かれた5つの傑作映画をセレクト。実際の事件に迫り、本作の魅力とその背後にある事件の背景に迫る。第1回。(文・村松健太郎)
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“世界でいちばん有名な死体”を描いた逸品
『ブラック・ダリア』(2006)
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ジョシュ・フリードマン
原作:ジェームズ・エルロイ
出演:ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンク、ミア・カーシュナー
【作品内容】
1947年に起きた、ロサンゼルスの郊外の空き家で、身体が真っ二つに切断されている女性の惨殺死体が発見される。捜査に当たった2人の刑事が事件に取り憑かれていくのだが…。
【注目ポイント】
原作は、アメリカ文学界の狂犬と称させる異端のベストセラー作家ジェイムズ・エルロイが、実在の事件を虚実を交えて描いた名作小説である。モデルとなった事件は残酷であると同時に人を惹きつける。ある日、ハリウッドスターを夢見てクラブのホステスとして働いていたエリザベス・ショートの遺体が発見される。
むごい状態で発見された遺体は当時のマスコミに大々的に取り上げられ、“世界でいちばん有名な死体”と称された。マスコミは当時公開された映画『青い戦慄(原題・”The Blue Dahia)』になぞらえて“ブラック・ダリア”と命名。映画『ブラック・ダリア』は実在の事件を題材にしているわけだが、そもそも実在の事件自体が映画的な記憶に彩られている。そう考えると、アルフレッド・ヒッチコックの熱心なファンであり、キャリアを通じて映画へのオマージュを自作の端々に忍ばせてきたブライアン・デ・パルマらしい題材である。
映画の中盤で事件に異様なまでの執念を見せていたリーが謎の死を遂げるとバッキーはリーの死とブラック・ダリア事件との関連を疑うようになり深い闇の中に堕ちていく。
被害者であるエリザベス・ショートを演じた、ミア・カーシュナーの美しさ、デ・パルマらしい卓抜なカメラワーク、最後まで緊張感が持続するストーリーテリングと、見どころがたっぷり詰まっている。本作を観て「世界で最も有名な未解決事件」に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
(文・村松健太郎)
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