『世にも奇妙の物語』史上最も不気味な話は? 謎多き神回(2)とんでもない快楽…もしセミに生まれ変わったら?
1990年に放送がスタートした『世にも奇妙な物語』。喜怒哀楽のいずれにも分類できない斬新なストーリーや心をつかむ演出と演技で、長年にわたって老若男女問わず愛されてきた。そこで今回は、同番組の30年以上にわたる歴史の中から、恐いけどなぜか笑える意味深なエピソードをセレクト。物語の内容と見どころを解説する。第二回。(文・編集部)
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生まれ変わりを描いた
「脚本家バカリズム」の原点
「来世不動産」(2012/主演:高橋克実)
放送日:2012年10月6日
原作:升野英知「来世不動産」(『東と西2』所収)
演出:岩田和行
脚本:升野英知
出演:高橋克実、バカリズム
【あらすじ】
田中(高橋克実)が目を覚ますと、そこには一面の草原が広がっていた。辺りを見回すと、「来世不動産」と書かれた建物がぽつんと建っている。早速中に入る田中。そこには、怪しげな男(バカリズム)が一人佇んでいた。
いらっしゃいませ、と田中を迎えた男は、彼がすでに他界していることを告白。さらに、生前の善行や悪行を換算し、ポイントに応じて来世を選べると伝える。田中は当然人間を希望するが、ポイントが足りないと言われてしまい…。
【注目ポイント】
『ブラッシュアップライフ』(2023、日本テレビ系)で東京ドラマアウォード2023脚本賞を受賞するなど、芸人のみならず、脚本家としても活躍するバカリズム。そんな彼が原作・脚本・主演の3役を務めた作品が、この「来世不動産」だ。
この世を去った男が、死後に冥界で審判を受ける―。この設定自体は、古今東西極めてありふれた設定だ。しかし、本話では、このオーソドックスな設定に、バカリズムらしい緩い笑いが散りばめられている。
まず、注目のシーンは、田中と男が生まれ変わる生き物を「内見」するシーンだろう。まず、「おすすめ物件」の牛を「内見」するべく、牧場にやって来た2人は、なぜか搾りたての牛乳に舌鼓を打つことに。
「牛乳は確かに美味しいんですけど、牛になったらそもそも飲めませんよね」
「まあ、牛になればこんなにおいしい牛乳が毎日出せるってことですよ」
続いて漁場にやって来た2人は、「おすすめ物件」である伊勢海老を、なぜか食べてしまう。
「食べちゃダメでしょ物件を。これ、ただのグルメ旅行じゃないですか」
「まあ、これくらい美味しくなれるってことですよ」
牛も伊勢海老も論外。そう突っぱねる田中に、最終的に男が提示した「物件」はなんとセミだった。男によると、セミの一生は短いがその代わり、1週間ずっと「人間が夜の営みで感じる100倍」の快楽を感じるのだという。
そしてラスト。アブラゼミに生まれ変わった田中は、「セミサイコー!セミサイコー!」と叫びながら飛び回る。そして、死を迎えそうな病人に対して、「次生まれ変わるならセミがおススメですよ~!」と告げるのだった。
なお、「生まれ変わり」や「人生における徳」といった本話のテーマは、『ブラッシュアップライフ』や『素敵な選TAXI』(2014、フジテレビ系)の根幹をなすテーマでもある。そういった意味で本話は、脚本家バカリズムの原点ともいえる作品かもしれない。
(文・編集部)
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【了】