2024年最も活躍した女優は? 演技が絶賛された主演女優(1)神演技を連発…細胞レベルで役に溶け込む天才
2024年も名作ドラマが誕生した。ここ数年、各局がこぞってヒット作を生み出そうとしている熱意は、役者陣のパフォーマンスを充実させ、画面を通しても視聴者へと伝わる。そこで今回は、2024年のドラマでとりわけ素晴らしい演技を披露した“主演女優”を5人セレクト。それぞれの芝居の魅力を紹介する。第1回。(文・苫とり子)
—————————-
細胞レベルで役に溶け込む名演技
杉咲花『アンメット』(カンテレ・フジテレビ系)
4月期に放送され、「東京ドラマアウォード2024」作品賞・連続ドラマ部門で優秀賞を受賞、「第120回ザテレビジョン」ドラマアカデミー賞で最優秀作品をはじめ、6冠を達成した『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)。
本作は、不慮の事故で過去2年間の記憶を失い、その日の記憶も翌日でリセットされてしまう記憶障害を抱えた脳外科医のミヤビ(杉咲花)が、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶(若葉竜也)の助けを借りながら目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していく姿を描いた医療ヒューマンドラマだ。
ともすればやや現実離れした設定に視聴者が離れていきそうなこのドラマをリアリティのあるものにし、人々を夢中にさせたのは主演の杉咲花。彼女は10月期放送の『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)でも物語の鍵を握る朝子役を好演している。
『市子』や『52ヘルツのクジラたち』など、昨年から今年にかけて映画での活躍が目覚ましい杉咲だが、そこで培われた力がドラマにも大いに生かされ、歴史に残る名シーンを多数生み出した。
なかでも印象深いのが、『アンメット』第9話における若葉竜也との長回しのシーン。三瓶が重度障害者だった亡き兄への思いを吐露する大事なシーンで、若葉と杉咲の細胞レベルで役に溶け込む演技がドキュメンタリーのような質感を作り出していた。
極め付けには、「三瓶先生は私のことを灯してくれました」という物語の本質に迫る杉咲の秀逸なアドリブ。彼女は役を「演じる」というよりも「生きる」という言葉が誰よりも似合う。でも、それは才能の一言で片付けることはできない。
杉咲は、毎日の出来事を詳細に綴ったミヤビの日記を、映像に映らない部分も含めて直筆で記し、腱鞘炎になったことを『アンメット』Blu-ray&DVD BOXに収録されている出演者座談会で明かしていた。そうした努力の積み重ねの先に、観る人の心を震わす名場面が生まれているのだ。
2025年4月4日に公開される坂元裕二脚本の映画『片思い世界』では、広瀬すず、清原果耶とトリプル主演を務める杉咲。常に自己最高を更新し続ける彼女の来年の活躍にも期待したい。
【関連記事】
2024年、最も活躍した女優は? 演技が絶賛された主演女優(2)
2024年、最も活躍した女優は? 演技が絶賛された主演女優(3)
2024年、最も活躍した女優は? 演技が絶賛された主演女優(全紹介)
【了】