史上最も泣ける「父と子の絆」を描いた映画は? 心温まる結末(2)父の奮闘ぶりが愛おしい…余韻が最高のラスト

text by シモ

女は十月十日をかけて母になるが、出産を経験しない男はいつ父親になるのか。実際、子育てに悩む男がいるのも事実だ。しかし映画は、あらゆる人の人生に寄り添い、一緒に答えを見つけてくれる。そこで今回は、お父さんの愛情が溢れる洋画を5本セレクトしてご紹介する。(文・シモ)※この記事では物語の結末に触れています。第2回。

——————————

『クレイマー、クレイマー』(1979)

映画『クレイマー、クレイマー』
映画『クレイマー、クレイマー』【Getty Images】

監督:ロバート・ベントン
脚本:ロバート・ベントン
原作:エイヴリー・コーマン
出演:ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジェーン・アレクサンダー

【作品内容】

 仕事一筋で家族を顧みないテッド(ダスティン・ホフマン)。妻のジョアンナ(メリル・ストリープ)の話も聞かずに、自分の仕事ばかり優先している。

 不満を募らせた彼女はある日、7歳の息子ビリー(ジャスティン・ヘンリー)を残して、家出してしまう。

 翌日から、テッドは仕事と家庭の両立をしながら、ビリーを育てるが…。

【注目ポイント】

 妻に子育てを任せきりだった夫が突然、男手一つで息子を育てることになったら?

 仕事人間だったテッドは、家庭に無頓着だ。毎日妻のジョアンナに料理を作らせていたので、息子のビリーの朝食に何を作ってやればいいのかわからない。

 とりあえず朝食にフレンチ・トーストを作ってみるものの、その手際は見ていられないレベル。割り入れた生卵の殻は指で取り出すし、食パンを浸す入れ物はボールではなく小さなコーヒーカップだ。

 そして、いざ、フライパンでトーストを焼いてみるが、不注意で焦がしてしまう。しまいには、フライパンをひっくり返して、かんしゃくを起こす始末だ。

 そんな不器用な父デッドが、ビリーの良い父親になろうと努力する姿が涙ぐましい。

 筆者が個人的に印象的に残ったシーンは、ビリーが遊具から落ちて大けがをした時に、テッドが病院に駆け込むシーンだ。

「私の息子だ。そばにいてやりたい」

 痛がるビリーの顔を10針縫う事態に、テッドはつきっきりでケアするのである。

 このシーンには、テッドが息子のビリーを男手ひとつで育てていこうとする決意が、感じられる。

 しかし、ビリーの親権は、妻のジョアンナに渡ってしまう…。ビリーと過ごす最後の朝。テッドはビリーに、はじめて作ったフレンチトーストを料理する。そこには、慣れない手つきで料理をしていた頃のテッドの姿はない。

 このシーンを目にした瞬間、思わず拍手を送りたくなること請け合いだろう。料理だけでなく、父親として成長したテッドの姿を見たからだ。

 最終的に妻のジョアンナは、ビリーを引き取ることをあきらめる発言をして、物語は幕を閉じる。結局、3人はどうなるのだろうか? 観る者に未来を想像させる終わり方となっている。

(文・シモ)

【関連記事】
史上最も泣ける「父と子の絆」を描いた映画は? 感動のラスト(1)
史上最も泣ける「父と子の絆」を描いた映画は? 感動のラスト(3)
史上最も泣ける「父と子の絆」を描いた映画は? 感動のラスト(全紹介)
【了】

error: Content is protected !!