映画史に残るバッドエンドは? 忘れられない衝撃のラスト(1)鬱すぎる展開と理不尽な死…微かな希望とは?

text by シモ

どんな生き物にも必ず死は訪れる。だからこそ今をどう生きるのか、何をして生きるのかが大切なのではないだろうか。映画の中の主人公は、身を持って我々に教訓を与えてくれる。そこで今回は、主人公が悲劇的に死ぬ洋画を5本セレクトしてご紹介する。第1回。(文・シモ)

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究極の「胸くそ映画」と評される衝撃作

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)

ビョーク
ビョーク【Getty Images】

監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・モース、ピーター・ストーメア、ジョエル・グレイ

【作品内容】

 チェコから移民してきたセルマ(ビョーク)は、アメリカの片田舎で息子のジーンとつつましく暮らす母親である。

 ミュージカルを生きがいにし、同じ工場で働くキャシー(カトリーヌ・ドヌーヴ)や周りの人たちの助けで心穏やかに暮らしていた。しかし、彼女には秘密があった。遺伝性の病で視力を失いつつあるのだ。

 息子のジーンも同じ運命をたどることを知っているセルマは、工場勤務で働いた給料を治療費のためにコツコツと貯めていたのだが…。

【注目ポイント】

 本作は、第53回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したデンマークのラース・フォン・トリアー監督のミュージカル映画だ。主人公が絞首刑を受ける様子を生々しく映し出す衝撃的な映像が強く印象に残る本作。

 この描写や全編に流れる不条理な展開のせいで、世間では本作を「鬱映画」や「胸くそ映画」と言う方も多いが、筆者は別の見方ができると思っている。衝撃的なシーンの前後には、希望が託されているからだ。

 それを表わすのが、セルマが息子の目の手術の成功を聞いたあと、心の声で精一杯の声を振り絞りながら歌う「最後から2番目の歌」だ。

「これは最後の歌じゃない。分かるでしょ?私たちがそうさせない限り、最後の歌にはならないの」。

 セルマが最後の最後に残す台詞は、絶望も心持ち次第で希望に変わる。というメッセージではないだろうか。このように捉える筆者にとって本作は、決して絶望的なだけの映画ではない。

 この作品で主演のビョークは、カンヌ国際映画祭女優賞を受賞している。サントラ盤も素晴らしいので、興味のある方はぜひ聴いてみてほしい。

(文・シモ)

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【了】

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