史上最もくだらない「サメ映画」は? 世紀の迷作(3)ビジュアルが可愛い…オタク熱狂の理由とは?

text by 編集部

2024年6月に公開されたNeflix映画『セーヌ川の水面の下で』。フランスで作られた本作は、「JAWS」(1975)以来のサメ映画の伝統を受け継ぐ名作だった。しかし、この裏で、毎年数々の「Z級サメ映画」が量産されていたことをご存知だろうか。今回は、思わず「時間を返せ!」と叫びたくなるようなサメ映画5本を紹介しよう。第3回。(文・編集部)

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『シャーケンシュタイン』(2016)

<div>※写真はイメージです。【Getty Images】</div>
※写真はイメージです。【Getty Images】

上映時間:73分
原題:Sharkenstein
製作国:アメリカ
監督:マーク・ポロニア
脚本:J・K・ファラー
キャスト:グレタ・ヴォルコヴァ、ケン・ヴァン・サント、ジェームズ・カロラス、タイタス・ヒムルバーガー

【作品内容】

 第二次世界大戦末期の1942年。ドイツの指導者ヒトラーは、フランケンシュタインを生物兵器化する実験を進めていた。しかし、実戦に投入する前に、ナチスドイツは敗北。フランケンシュタインの実験は、闇に葬られていた。

 時は過ぎ、アメリカのとある港町。観光に訪れたマッジたちは、偶然ネオナチの研究所に迷い込んだ。

 そこでは、世界制服を目論む悪の化学者クラウスが、サメとフランケンシュタインを合体させた“シャーケンシュタイン”の開発を進めており―。

【注目ポイント】

 “ペンシルバニアのスピルバーグ”の異名を持つサメ映画界の巨匠、マーク・ポロニア。これまで数多くのサメ映画を世に送り出してきた彼だが、中でもZ級映画ファンの心をつかまえてやまないのが、この『シャーケンシュタイン』だ。

 “フランケンシュタイン×サメ”という、映画界を代表するスターを掛け合わせたこの作品だが、全体の作風も「合成感」が満載だ。

 例えば冒頭、ナチスが「シャーケンシュタイン」の開発を行っているシーンは、静止画の港のレイヤーに、動画の波のレイヤーを重ねており、浮上する潜水艦は、素材画を動かすことで表現されている。

 圧倒的な「重ねただけ感」に、B級映画好きなら思わず血が騒ぐこと請け合いだ。

 そして開始から7分あまり、ようやくシャーケンシュタインが登場する。ただ、そのビジュアルには、おどろおどろしさはあまり感じられない。

 どちらかというと、NHKの人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」にでも登場しそうなキュートなものだ(確かに海中からいきなりがんこちゃんが襲ってきたらかなり怖いが)。

 ただ、本作の見どころは、実のところ映画的なスペクタクルではない。むしろ、随所にちりばめられた監督の映画愛にある。

 例えば後半、マッジたちが住民たちと大挙して陸に上がったシャーケンシュタインを退治しに向かうシーンでは、仲間のスキップがマッジに、「ホラー映画の法則」を引き合いに「モブには近づくな」と諫言する。

 また、終盤では、「映画を参考にシャーケンシュタインを撃退しよう」というスキップの意見から、フランケンシュタイン映画の知識を惜しげもなく披露している。こういった細かい部分の描写が、Z級映画のマニアに刺さりまくるのだ。

 『シャーケンシュタイン』。それは、さまざまなサメ映画を見尽くした巨匠の映画愛の結晶なのかもしれない。

(文・編集部)

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【了】

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