エンタメ業界の闇を暴いた映画、最高傑作は? 衝撃の問題作(1)権力者の裏の顔がヤバい…歴史を変えた告発劇
昨今テレビやSNSで取り沙汰されている政治家の汚職や金も問題、さらにテレビ局やタレントによる信じ固いニュースを目にすると、世の中への不信感は募る一方だ。そして報道されるものを頼りに生活をしてきた私たちは、何を信じていいのか分からず戸惑いを隠せない。そこで今回は、マスコミの闇を描いた海外映画を5本を紹介する。第1回。(文・阿部早苗)
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大物映画プロデューサーへの#MeToo運動
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』(2022)
監督:マリア・シュラーダー
キャスト:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン
【作品内容】
ニューヨーク・タイムズの記者ミーガンとジョディは、映画プロデューサーのワインスタインによる性的暴行の取材を始める。これまで何度も事件がもみ消された現状を知り、業界の隠蔽体質や被害者の恐怖に直面する…。
【注目ポイント】
かつて『スクリーム』(1996)『キル・ビル』(2003)『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)など数多くのビッグタイトルに関わった大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン。ハリウッドの絶対的な権力をもつ彼の長年にわたる性的暴行を暴いた記者たちの実話に基づいた本作。「#MeToo運動」を切り拓くことになったニューヨーク・タイムズ紙の調査報道を描き、製作には俳優のブラッド・ピットが参加したことで話題となった作品だ。
映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたり性的暴行を重ねていたという情報を入手し、取材を始めた記者のミーガンとジョディ。ふたりは、被害者たちが示談金によって、長年深い傷を抱えながら沈黙を強いられている現状を知る。
被害者の女性たちは彼に声を上げることでキャリアが絶たれるばかりか社会的に抹殺されることを恐れ、沈黙を選ばざるを得なかった。それほどの権力がワインスタインにはあった。
口封じは関係者にまで及び、ミーガンらは緻密な取材を重ねて被害者たちから証言を集めてもワインスタイン側の圧力によって妨害されてしまう。そんな流れを変えたのが被害者のひとりである女優・アシュレイ・ジャッドだ。実名で証言内容の報道を承諾したことで、のちにワインスタイン逮捕へと結びつく。それだけではない、彼女の勇気が多くの被害者女性たちを動かすのだ。
ちなみにアシュレイは実際の被害者でもあり、本人役で出演。被害者が声を上げることの難しさとそれに伴うリスクを本人が語ることで、映画に稀有な説得力をもたらしている。
巨大な権力構造の中で加害者を守り、被害者を孤立させるといった社会に根深く存在する“権力を維持する仕組み”の問題を浮き彫りにしている作品と言えるだろう。
(文・阿部早苗)
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