最も泣ける“難病の主人公”を描いた実話映画は?(3)我慢したくない…笑って泣ける珠玉のヒューマンドラマは?
人に与えられた時間は平等ではない。そんな当たり前のことを忘れてしまってはいないだろうか。平凡な毎日がどれほど尊いものか、今一度考えてみてみるのも良いだろう。そこで今回は、難病を題材にした泣ける邦画を5本セレクトしてご紹介する。(文・阿部早苗)
——————————
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)
監督:前田哲
脚本:橋本裕志
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」
出演:大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市、原田美枝子
【作品内容】
医学生の田中(三浦春馬)は、筋ジストロフィーを患う鹿野(大泉洋)のボランティアをする。鹿野はワガママだが憎めない存在だ。そんな鹿野は新人ボランティアの美咲(高畑充希)に恋し、田中にラブレターの代筆を頼む。しかし、美咲は田中の恋人だった。
【注目ポイント】
本作は、ノンフィクション作家・渡辺一史による『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』を原作に『そして、バトンは渡された』などを手がけた前田哲監督がメガホンを取った。難病・筋ジストロフィーを抱えながらも、自らの生き方を貫いた鹿野靖明さんの実話をもとにした作品だ。
主人公の鹿野(大泉洋)は、幼少期に筋ジストロフィーを発症し、身体の自由をほぼ失っていた。しかし彼は病院や施設での生活を拒みボランティアたちとともに自宅で暮らすことを選ぶ。そんな彼の元には、医療や介護の知識がない一般の学生や社会人が、交代制で介助に訪れる。ある日、新人ボランティアとして美咲(高畑充希)が訪れる。それからというもの、彼女は恋人である田中(三浦春馬)とともに鹿野の生活に深く関わることになる。
鹿野は自由奔放でわがまま。「夜中にバナナが食べたい」と突然言い出してボランティアを困らせたり、気に入らないことがあると遠慮なく文句を言ったりする。しかし、そんな彼の言動には「障がい者だからといって我慢したくない」「健常者と同じように生きたい」という強い信念があった。
ちなみに筋ジストロフィーとは、進行性の難病で、筋肉が徐々に衰えていく疾患。特に鹿野さんが罹患した「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」は、幼少期から症状が現れ、多くの場合、十代には呼吸筋障害が起こり人工呼吸器につながれることになるという。
本作で鹿野の生き様は、障がいの有無に関係なく、「自分の人生をどう生きるか?」というテーマを観る者に投げかけているように感じる。彼のユーモアと強さ、そしてボランティアたちとの絆が、涙と共に深く心に刻まれる映画だ。
人は誰かに支えられるだけでなく、“自分もまた誰かを支えている”そんな大切なことを教えてくれる作品といえるだろう。
(文・阿部早苗)
【関連記事】
最も泣ける“難病”がテーマの日本映画は? 珠玉の感動作(1)
最も泣ける“難病”がテーマの日本映画は? 珠玉の感動作(4)
最も泣ける“難病”がテーマの日本映画は? 珠玉の感動作(全紹介)
【了】