エンタメ業界の闇を暴いた映画、最高傑作は? 衝撃の問題作(3)ゾッとする…設定が怖いヒューマンドラマの名作

text by 阿部早苗

昨今テレビやSNSで取り沙汰されている政治家の汚職や金も問題、さらにテレビ局やタレントによる信じ固いニュースを目にすると、世の中への不信感は募る一方だ。そして報道されるものを頼りに生活をしてきた私たちは、何を信じていいのか分からず戸惑いを隠せない。そこで今回は、マスコミの闇を描いた海外映画を5本を紹介する。第3回。(文・阿部早苗)

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メディアの暴走とプライバシー侵害問題を鋭く描く

『トゥルーマン・ショー』(1998)

映画『トゥルーマン・ショー』ワンシーン
映画『トゥルーマン・ショー』ワンシーン【Getty Images】

監督:ピーター・ウィアー
キャスト:ジム・キャリー、ローラ・リニー、ノア・エメリッヒ、ナターシャ・マケルホーン、ホランド・テイラー、エド・ハリス

【作品内容】

 離島の町シーヘブンで生まれ育ったトゥルーマン(ジム・キャリー)は、保険会社で働き、しっかり者の妻メリルと穏やかな日々を過ごしていた。しかし、彼には自分だけが知らない驚くべき秘密があった…。

【注目ポイント】

 1998年に公開された映画『トゥルーマン・ショー』は、主人公トゥルーマン・バーバンクの人生が、生まれた瞬間から全世界に向けて放送され続けるという衝撃的な設定を通じて、メディアの暴走とプライバシー侵害の問題を鋭く描き出した作品だ。

 トゥルーマンは、海に囲まれた架空の町「シーヘブン」で何不自由なく暮らしているように見える。しかし、実は彼の周囲のすべてが巨大なセットであり、家族も友人も、さらには見知らぬ通行人までもが番組スタッフや俳優たちだった。

 彼自身の人生が、24時間リアルタイムでテレビ番組として放送され、彼の日常は世界中の人々の娯楽となっているのだが、トゥルーマンはこの現実を知らされておらず完全にプライバシーを侵害している。たとえ平穏に暮らせるとしても筆者ならば耐えられない。

 終盤では番組の世界から脱出しようと試みるが、彼が外の世界に出ることを阻止するためにメディアは手段を選ばない。船で海を越えようとするシーンでは、カメラがトゥルーマンを追跡し故意的に荒波をたてる様子が映し出される。

 現代では、至る所に設置されている監視カメラやビッグデータの活用によって、私たちの日常もまた、企業や政府によって収集・分析されている。SNSに投稿する写真や動画が意図せず拡散され、個人情報が知らぬ間に漏洩されることも少なくない。

 本作は20年以上前に作られたフィクション映画ではあるが、今の社会においても私たちのプライバシーが脅かされていることを強く示唆しているように感じてならない。

(文・阿部早苗)

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【了】

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