史上最も「胸糞が悪い恋愛映画」は? 残酷なロマンス(4)愛葬式で出会った男女の恋物語…死と愛を描いた名作
恋愛と一口に言っても華やかな側面ばかりではない。経験してきた方なら言わずもがなだが、やはりそこには影もある。今回はそんな恋愛の負の部分を濃厚に描いた恋愛映画の傑作をご紹介。珠玉の海外映画を5本セレクトした。第4回。(文・村松健太郎)
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『永遠の僕たち』(2011)
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ジェイソン・リュウ
キャスト:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、シュイラー・フィスク、ジェーン・アダムス、ルシア・ストラス、チン・ハン
【注目ポイント】
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)や『エレファント』(2003)など、数々の名作で知られる名匠ガス・ヴァン・サント。そんな彼が、「死」と「愛」を描いた青春映画が『永遠の僕たち』だ。
主演は、ハリウッドの往年の名優デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパーと、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)のミア・ワシコウスカ。加えて2人の愛の行方を見守る特攻隊員ヒロシの幽霊役として、『硫黄島からの手紙』(2006)や『沈黙-サイレンス-』(2016)などの海外作品への参加が目立つ加瀬亮が出演している。
他人の葬式に参加することが大好きな青年と、不治の病に侵され余命宣告を下された少女。本作では、そんな2人の「タイムリミット付きの愛」を通して、生きることの意味と死を受け入れることの大切さを描いている。
そして、本作にさらなる深みを与えているのが、加瀬演じるヒロシの存在だ。イーノックの唯一の友人である彼は、今際の際のアナベルを迎えに行き、かつて恋人にあてた手紙を朗読する。
上官は敵艦に当たる時”バンザイ”と叫べと言います
私は貴方の名をささやきます
死んでも生ある如くー
貴方に永遠の想いを
その後、ヒロシとともにアナベルを看取ったイーノックは、葬儀の席上で彼女と暮らした日々を追想し、にこりと微笑むのだった。
葬式で出会った男女の恋を描く本作は、終始死の影がつきまとっている。人間存在が消滅してもなお続く永遠の愛。その大きさに魂が揺さぶられる珠玉の青春映画だ。
(文・村松健太郎)
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【了】