プロが選ぶ史上最も殺陣が上手い俳優は? 歴代最強の逸材(2)ほぼ完璧…専門家が絶賛する理想的な美剣士は?
『侍タイムスリッパー』(2024)や『室町無頼』(2025)など、話題の時代劇作品の殺陣を手がけた清家一斗さんは、1990年生まれの若手でありながら、伝統的な時代劇文化を継承する殺陣師として活躍している。今回はその清家さんと同世代の時代劇リサーチャーで絵描きのNuiが対談を行い、いま改めて注目したい“殺陣の凄い時代劇俳優”5人を選出した。(文・取材:Nui)
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合田雅吏
―――続いてご紹介するのは、『水戸黄門』で原田さんとコンビを組まれた「五代目格さん」合田雅吏さんです。
清家「合田さん、素晴らしいですよね。蹴りをやったときに、脚、なっがいなぁ! って(笑)」
―――合田さんって刀より素手のイメージが強いからか、合田さんの殺陣について語られることは少ないイメージです。でも、合田さんは、とにかくリーチが長くて、マンガみたいな跳び蹴りをされる。
清家「背が大きい方って動きがぬるく見えちゃう人が多いんですけど、合田さんは、そこをカバーしきった上で、ただただ大きく動ける。本当にすごいですよね。身長が183センチくらいあって、スピードを落とさず大きく見せられる方って、まあそうはいないです。
僕、合田さんの蹴りが好きなんですけど、仰るとおりリーチがあるっていうのは利点ですよね。とくに御園座で行われた舞台版『水戸黄門』の場合、蹴りであの長さの脚が上がるって、すごい迫力だと思うんですよ。
スピードの原田と、ダイナミックの合田。あの『五代目助さん格さん』は、このバランスが本当に素晴らしいんですよね。歴代でも別格のコンビだと思います」
―――殺陣師というオンリーワンの立場から、それほど絶賛されるというのは…。これは、2人が7年間のテレビシリーズでコンビを組んできた積み重ねの賜物なんですかね?
清家「単純に、とても相性のいい助さん格さんだと思います。舞台の真ん中で見栄を切った時の美しさ、バランスの良さ。もう最高ですね」
―――絵にするときに、ものすごく絵にしやすい方たちなんですよね。ちなみに、合田さんは2003年に格さん役として決まった当時、鏡の前で何度も印籠出しの練習をしている映像が残っているんですが、腕のリーチの長さもあって、手を伸ばすまでのモーションがパーフェクトですね。
清家「それに、原田&合田コンビは、一回手をつけて一回やってみてもらうだけで、ほぼ完璧に形になるんですよ。去年の「水戸黄門」公演のときは本当に素晴らしくて、原田&合田コンビじゃないと、あの稽古日数の少なさで、あそこまでの作品は絶対にできていないです」
―――そうですか。どうしよう。五代目マニアとして泣いてます(笑)。ちなみに、合田さんは、あの身長でがっしりもしてるんですが、線がすごく細い方だから、二次元的なかっこよさになるというか。華やかでダイナミックなんだけど色の白い方で中性的で、やっぱりマンガやアニメのキャラクターみたいな、理想的な美剣士っていう感じ。
清家「確かに、顔が大きいことがよしとされた昔のスターに比べると対照的ですね」
―――ですよね。むしろ、合田さん演じる格さんは、引きになったときに周りに比べて顔が小さすぎて、顔が目立たないんです。もはやスーパーモデルだから(笑)。それだけスタイルがよすぎる。あと、後ろにいる人より顔が小さいことがあるから、遠近感がわからなくなって、どこにいるかわからないときも(笑)。
清家「(笑)」
―――正直、8頭身の美剣士なんて実在しないとずっと思っていたんですが、合田さんを見たときに、「見つけた!」と思ったんです。そこから合田さんは私の神様です(笑)。はやく合田さんのポニーテールの美剣士が見たいなあ…。
清家「似合うでしょうね! 顔が小さいから。本当に二次元に近い。原田さんもそうだし、里見浩太朗さんもそうなんですよ。あの三人の御一行が二次元。花道から出てきたときとか、『うわぁ…』ってなりますよね。マンガみたいで」
―――なります。でも合田さんの刀の殺陣も見たいですね。もうちょっと得物を持った合田さんを見る機会も欲しい。
清家「刀も見たいですね。……やっぱり、原田さんと合田さんで一騎打ちですね。僕がやりたいなあ、殺陣つけたいなあ。舞台もいいけど、映像でやってほしいなあ」
―――やってほしい! どうしてもどっちかが負けないといけないんですよね? やっぱり合田さんが血まみれなほうが見たいかなあ(笑)。
清家「個人的な好みとしては(笑)。ちなみに、宮本武蔵と佐々木小次郎はどうですか?」
―――いいですね! 合田さんが小次郎ですよね? ポニーテールですよね(笑)?
清家「もちろんもちろん、ポニーテール(笑)」
―――あのでっかい刀、合田さんなら持てるんだ!
清家「必殺の燕返しをやってもらって。武蔵なら原田さん、ジャンプ斬りもできますしね。ぜひやってもらいたい」
―――あのふたり、それができるんだ…。巌流島、プロデュースしましょう。なんとかしたいです。ちょうど、「弥次喜多」以外に何がある? と思ってたところだったんですよ(笑)。
(文・取材:Nui)
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