プロが選ぶ史上最も殺陣が上手い俳優は? 歴代最強の逸材(5)演技もアクションも天下一品…世界に誇る名優は?
『侍タイムスリッパー』(2024)や『室町無頼』(2025)など、話題の時代劇作品の殺陣を手がけた清家一斗さんは、1990年生まれの若手でありながら、伝統的な時代劇文化を継承する殺陣師として活躍している。今回はその清家さんと同世代の時代劇リサーチャーで絵描きのNuiが対談を行い、いま改めて注目したい“殺陣の凄い時代劇俳優”5人を選出した。第5回。(文・取材:Nui)
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渡辺謙
―――最後は渡辺謙さんです。これはけっこう意外な人選でした。
清家「僕にとって謙さんといえば娯楽痛快時代劇『御家人斬九郎』(1995-2002、フジテレビ系)ですね。とても大好きな時代劇で、謙さんは、普段はぐうたら、闘ったらべらぼうに強い主人公、斬九郎を演じているんですが、先輩たちはよく、謙さんはあまり殺陣が得意じゃなかったという話をするんですね。
でも、改めて見ると、とてもいい動きをしているんですよ。身体が大きくて動きも早いし、何よりお芝居ができるというのが素晴らしい。特に素晴らしいのは、目力で敵の動きを止める殺陣ですね」
―――目で敵の動きを止めるのも殺陣なんですか?
清家「そうなんです。とにかくすごい表情なんですよ、圧が出ているというか。謙さんの殺陣は、個人的には大好きな殺陣ですね。
着流しって、袴みたいに足が開かないので難しいんですよ。それでも謙さんの殺陣は絵になっているので、かなりの努力をされたのだと思います」
―――着流しの殺陣は王道のイメージなので、あまり考えたことがなかったですね。でも、よく考えたら当然ですね。
清家「はい。もう、可動域が全然違います」
―――『御家人斬九郎』は松竹の必殺のスタッフが作ってるんですよね。清家さんは、小学生の頃にご覧になっていたんですか?
清家「そうです。『斬九郎』見る! って言ってました(笑)。僕としては、謙さんは主役として素晴らしい立ち回りをしてらっしゃるなと思います」
―――謙さんって、正直立ち回りのイメージがあんまりないですよね。去年トークショーに行って初めて生の謙さんを見てきたんですが、普段はすごく穏やかなおじさまって感じで、目で止めるっていうイメージはゼロでした。そういう意味で、「ザッツ・役者」なんですかね?
清家「スイッチが入るとそうなるんでしょうねえ。ゾクッとするくらいの目の送り方なので。
正直荒削りではあるんですけど、やっぱり芝居っ気があるというか、魂がこもった立ち回りですね。そのへんを見ると、やっぱり“世界のケン・ワタナベ”やなって思います。いまの一生懸命殺陣をやる人たちとは、ちょっと違いますね」
―――へえ!
清家「持ってるものが違うって感じですか。これまで紹介してきたひとたちは、立ち回りの動きや、速さ、大きさ、所作ごとの素晴らしさで選びましたが、謙さんに関しては、役者としての芝居の在り方や、立ち回りのテイストが僕の好みとあっているって感じです。
ここでこう睨んでほしい! って思うときに、そういう表情や目の送りを細かくやっている。斬九郎というキャラクター込みで素晴らしいなと」
―――ちなみに、目の送り方にもいろいろやり方があるんですかね?
清家「はい。一般的に、人の動きを目の動きで抑え込むとき、クッと睨む人が大半だと思うんですよ。でも、謙さんの場合は、ビームでおさえる感じ。そのイメージを謙さんはやってくれてるなって」
―――ちなみに橋蔵さんも、顔が先に向いて、後から目で追うということをやられていますね。
清家「やり方はいろいろあるんですが、謙さんの場合は、顔じゃなくて目が動いて、それでおさえる。目が先に動いて、ぐっと睨むんです。エネルギッシュな送り方ですね。
立ち回りも鋭くて良いものなので、もっといろいろな方に魅力を知ってもらいたいですね」
(文・取材:Nui)
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