最悪のバッドエンド…? 主人公が非業の死を遂げる日本映画(5)生々しい…目も当てられない悲惨な最期とは?

text by シモ

映画にはハッピーエンドでラストを飾る作品も多く存在するが、救いようの無い悲しい結末で終える作品もある。そんな作品は、観る者にダメージを与えるが、意外にも心に残るものだったりもする。今回は、主人公が報われないだけでなく、非業の死を遂げてしまう日本映画をセレクト。作品の魅力も併せて紹介する。第5回。(文・シモ)

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カタギの人間を守るべく.…。
原作者も監督も東映任侠映画に魅了され製作

『孤狼の血』(2018)

役所広司
役所広司【Getty Images】

監督:白石和彌
脚本:池上純哉
出演者:役所広司、松坂桃李、真木よう子、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、阿部純子、野中隆光、中村獅童、竹野内豊、嶋田久作、勝矢、さいねい龍二、MEGUMI、伊吹吾郎、滝藤賢一、矢島健一、田口トモロヲ、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介

【作品内容】

 昭和63年(1988年)8月、暴力団対策法成立直前の広島。暴力団・尾谷組と巨大組織・五十子会系の加古村組の抗争がくすぶる中、呉原東署のマル暴刑事・大上章吾(役所広司)のもとに、広島県警本部から日岡秀一(松坂桃李)が配属される。

 日岡は、暴力団との癒着を噂される大上と加古村組関連の金融会社社員が失踪した事件の捜査にあたるが、これを機に尾谷組と加古村組の抗争が激化していく…。

【注目ポイント】

 柚月裕子の小説『孤狼の血』を、白石和彌監督が映画化した本作。

「警察はなにをしてもええんじゃ」

 捜査のためなら違法行為も厭わない呉原東署のマル暴刑事大上は、窃盗や侵入、放火などあらゆる違法行為を物ともせず、過激な捜査を繰り返す。土地に根を張る尾谷組からは、賄賂まで受け取る始末だ。

 ヤクザ顔負けの行動を取る大上だが、その行動には固い信念がある。それは、呉原市に暮らすカタギの人間を守るため。信念を守るために、大上はあえて極道の世界に入りうまく立ち回っているのである。

 物語の終盤。対立する広島仁正会と尾谷組の抗争を収めるために間を取り持とうとする大上は、五十子会の会長、五十子正平(石橋蓮司)を説得しようと向かうも失敗。リンチされた揚げ句、養豚場でブタの糞を食わされるという目も当てられないような拷問を受けて死んでしまうのである…。

 本作は、東映の任侠映画を踏襲する数々の暴力シーンが、生々しく登場する。原作の柚月裕子が、東映の『仁義なき戦いシリーズ』などの実録映画の世界に魅了されていたことや、メガホンを撮った白石和彌監督も同じく『仁義なき戦い』に影響を受けているのも無縁ではないだろう。

 2021年には、続編となる『孤狼の血 LEVEL2』が公開され、3作目の製作も発表された。続報を待ちたい。

(文・シモ)

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【了】

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