最も毒親の役が上手かった日本人女優は? トラウマ級の名演(3)鬼の形相に鳥肌…日本映画史に残るコワい怪演
text by 野原まりこ
ここ10年で“毒親”という言葉はすっかり世間に定着した。毒親を描いた映画は多く、中には鮮烈な描写で観る者に嫌悪感を惹起するものも…。もちろんそうしたネガティブな反応は描写や芝居の力の賜物であり、同じような悲劇が現実で繰り返されないように啓発する意義を持つ。そこで今回は、毒親の役を演じて強烈なインパクトを放った女優を5人セレクト。芝居の魅力を解説する。第3回。(文・野原まりこ)
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日本アカデミー賞8部門受賞の衝撃作
原田美枝子『愛を乞う人』(1998)
監督:平山秀幸
脚本:鄭義信
原作:下田治美
出演:原田美枝子、野波麻帆、中井貴一、小日向文世、熊谷真実、國村隼
【作品内容】
母親に虐待されていた記憶に蓋をしていた照恵(原田美枝子)は、自分も母親になり、娘を育てた。照恵は、幼い頃に死に別れた父親の遺骨を探す中で、まだ生きている母・豊子(原田美枝子:一人二役)に会うことを決意する。
【注目ポイント】
原田美枝子が一人二役で、幼いころ母親に暴行を受けた娘と、娘を虐待していた母親を演じた本作。
泣き叫んで「やめて」と懇願する娘に、手を休めることなく暴力を振るい、暴言を吐く姿も強烈だが、ピシャッと頬をビンタする描写は、日常的に暴力がコミュニケーションの手段になっていることを表しており、恐ろしさに身が縮む。
本作は、第22回日本アカデミー賞・作品賞、監督賞、主演女優賞や、第41回ブルーリボン賞で主演女優賞を受賞するなど、90年代以降の日本映画を代表する1本として高く評価された。観る人の心に親子とは何かを問う作品になっているが、上述のように過酷な描写に事欠かないため、ぜひ心に余裕がある時に観てほしい。
(文・野原まりこ)
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