史上最も面白いミュージシャンの生涯を描いた映画は?(1)前評判は低かったが…ブームを巻き起こした理由は?

text by 高梨猛

ノーベル文学賞を受賞した伝説のアーティストであるボブ・ディランの人生の一時期を描いた映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』が高い評価を得ている。そこで今回は、過去に製作されたミュージシャンの伝記映画の中でも、とりわけ傑作と名高い作品を5本セレクト。魅力を余すところなく紹介する。(文・高梨猛)

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『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)

フレディー・マーキュリー
フレディー・マーキュリー【Getty Images】

監督:ブライアン・シンガー
出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョゼフ・マゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー

【作品内容】

 移民出身として差別を受けながらも音楽の道を志していたファルーク・バサラ(ラミ・マレック)は「スマイル」というバンドで活動していたブライアン・メイ(グウィリム・リー)たちに声をかけ、新たなバンド「クイーン」を結成する。やがてファルークは「フレディ・マーキュリー」に改名。クイーンも成功の階段を駆け上っていくが、プライベートでは自身のセクシャリティの問題つきまとい、さらにメンバーとも金銭や権利問題で袂を分かつことになってしまう。

【注目ポイント】

 唯一無二のユニークな音楽性で一斉を風靡したバンド「クイーン」と、そのフロントマンであるフレディ・マーキューリーの鮮烈な生き様を描いた大ヒット作。

 映画では45歳で亡くなったフレディの生涯に焦点をあてているが、クイーンがブレイクしていく過程もしっかり描かれており、業界内での様々な横槍が入りながらもオリジナルな音楽性を追求し、ファンの支持を得ていく姿はカタルシスたっぷり。

 この作品は困難な製作過程でも知られており、企画は何人もの関係者を渡り歩いた末にブライアン・シンガー監督でスタート。しかし、ブライアン監督は途中離脱してしまい、急遽デクスター・フレッチャー監督がリリーフ登板して完成させた。

 公開前の段階で作品の評価はそこまで高くなかったものの、観客からは圧倒的な支持を獲得。日本でも口コミで評判が広がり、週を追うごとに興行収入が増え続けるという異例のヒットとなった。

 その要因のひとつは、再現度の高いライブシーン。クライマックスの「ライブエイド」での圧倒的な臨場感を体感するために何度も劇場に通ったというリピーターも多かった。

 音楽系自伝映画のブームを生み出し、新たな基準となった作品だ。

(文・高梨猛)

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【了】

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