最も毒親の役が上手かった日本人女優は? トラウマ級の名演(4)絶望的な怖さ… 人はなぜ毒親になるのか?
ここ10年で“毒親”という言葉はすっかり世間に定着した。毒親を描いた映画は多く、中には鮮烈な描写で観る者に嫌悪感を惹起するものも…。もちろんそうしたネガティブな反応は描写や芝居の力の賜物であり、同じような悲劇が現実で繰り返されないように啓発する意義を持つ。そこで今回は、毒親の役を演じて強烈なインパクトを放った女優を5人セレクト。芝居の魅力を解説する。第4回。(文・野原まりこ)
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人はなぜ毒親になるのか
尾野真千子『きみはいい子』(2018)
監督:呉美保
脚本:高田亮
原作:中脇初枝
出演:高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、喜多道枝、黒川芽以、内田慈、松嶋亮太、加部亜門、富田靖子
【作品内容】
真面目だが気弱な新米教師の岡野(高良健吾)。親に虐待されていた過去を持ちながら自分も娘に手をあげることをやめられない雅美(尾野真千子)。認知症に怯える独居老人・あきこ(喜多道枝)…。
さまざまな境遇を抱えながらも生きる彼らが、人とのつながりによって日常に小さな光を見つけていく。
【注目ポイント】
子どもの教育問題や現代社会の問題に深く切り込んだ衝撃作。尾野真千子は、自身も幼い頃に虐待を受けていたが故に、我が子にも手を挙げてしまう母親・雅美を演じた。
雅美は小さな子どもを引きずって床に突き飛ばす。小さな体は大人の力で簡単に吹っ飛んでしまう…。誰もが幼い頃にどうしようもないほど親に怒られたことがあると思うが、あの時の絶望感が呼び起こされるようだ。
池脇千鶴演じるママ友・陽子の家でお茶を飲んでいるところに、娘が飛ばしたボールが飛んできてカップが割れてしまう。雅美は目の色を変えて我が子を睨むが、その瞬間、娘が殴ってもいないのに頭を抱えて泣き出す。その瞬間、陽子は泣き出す幼いこどもではなく、母・雅美を抱きしめる…。
陽子は、雅美の手首にタバコの火を押し当てられた跡を発見し、雅美が幼少期に親に虐待されていた過去を言い当てる。我が子に暴力を振るっていることがバレてしまった気まずさと、自身の心に深く刻み込まれた古傷が抉り出され、雅美も泣き出してしまう。「抱きしめられたい。子どもだって、おとなだって」という本作のキャッチコピーを象徴する名シーンとなっている。
(文・野原まりこ)
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【了】