2025年の冬ドラマも盛り上がっている。今回は、現在放送中のドラマに出演する女優をピックアップ。キャリア十分の実力派や新境地を開拓した若手の中から、今季、最も役者として株を上げた注目の女性俳優5人を選出し、作品の内容と共に、俳優の魅力を解説する。第5回。（文・平良真咲）

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作品全体を大きく包み込むような包容力

小野花梨『私の知らない私』（読売テレビ・日本テレビ系）

『初恋、ざらり』（2023、テレ東系）で難役を演じ切ったことも記憶に新しい小野花梨。現在放送中の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』（NHK）でも、女郎という身の上でありながらも本気の恋をし、恋文を綴るうつせみを健気に演じている。

　一方、深夜ドラマの『私の知らない私』（読売テレビ・日本テレビ系）で小野が演じているのは、目が覚めたら1年間の記憶を失っていた羽田芽衣。記憶のなかった間に、転職し、タワーマンションに暮らす医師と同棲し、さらには高校時代から会っていなかった親友とも再会していたことを知る。

　そこでの芽衣に戸惑いはもちろんあるものの、ありきたりな驚きの表現をしない。感情を、一拍間をおいて吐露するかのようで、その居住まいがリアルだった。

　そしてその後、悪意をはじめとする周囲からの様々な想いを一身に受けていくことになるのだが…どう考えても狂気じみた行動をとる人物がいるなかで、小野が丹念に演じる芽衣は塩梅がちょうどいい。

　全部手放して逃げ出しちゃったほうがいいくらいの状況ではあるものの、もしも自分が壊してしまったのならば原因を知りたいと思う芽衣の強さも表現したうえで、フラットにそこにいてくれている。

　馬場ふみか、小池徹平らが振り切った演技ができているのも、小野の存在あってこそだろう。作品全体を大きく包み込むような包容力を感じる。物語がどのような結末を迎えるのかももちろんだが、小野の今後にもさらに期待が高まる作品となった。

（文・平良真咲）

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