絶望感が半端ない…もっとも憂鬱な日本の恋愛映画は?(4)奇跡の映画化…精神不安定な彼女との恋の行方は?

text by 村松健太郎

古今東西、恋愛には喜びと悲しみがつきものだ。華やかで心躍るような時間がある一方で、恋破れたときの悲しさは、生涯忘れがたい傷として脳裏に刻まれる。そこで今回は、そんな恋愛の負の側面を描いた邦画を紹介。なお、一部の紹介には結末のネタバレを含むため、お読みいただく際にはくれぐれもご注意いただきたい。第4回。(文・村松健太郎)

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喪失に耐えられない若者たちの傷

『ノルウェイの森』(2010)

松山ケンイチ
松山ケンイチ【Getty Images】

監督:トラン・アン・ユン
脚本:トラン・アン・ユン
原作:村上春樹
キャスト:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子

【作品内容】

 学生運動が盛んな1960年代末。大学生のワタナベは、上京して孤独な学生生活を送っていた。

 そんな中、ワタナベは、高校時代に自殺した親友キズキの恋人・直子と再会。恋に落ちるが、直子は徐々に精神的に不安定になっていく。

【注目ポイント】

 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『海辺のカフカ』など、数多くの名作を世に送り出してきた小説家、村上春樹。そんな彼の代表作を映画化したのが、この『ノルウェイの森』だ。

 メガホンを取るのは、ベトナム出身の映画監督トライ・アン・ユン。キャストには松山ケンイチや菊地凛子、水原希子らが名を連ねる。

 恋愛と喪失、エロスとタナトスをテーマに数多くの作品を執筆してきた村上。本作でも、ワタナベの性的覚醒や水原希子演じるヒロイン・緑の生命力などの「エロス」と、直子の精神的苦悩やキズキの自殺といった「タナトス」が同居し、作品にコントラストが生まれている。

 なお、従来、村上春樹作品は、映像化の許諾がかなり厳しいと言われており、本作も映像化の許可を得るまで4年、完成までを含めると16年もの歳月がかかったという。

 原作に心底惚れ込み、精魂込めて映像化したトライ監督。その心意気を、是非とも映像で堪能してもらいたい。

(文・村松健太郎)

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【了】

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