日本映画史上最高のファンタジー恋愛映画は? 謎めいた名作(1)発想が天才的…素晴らしいリメイクとは?
映画『2001年宇宙の旅』(1968)以降、大作志向が顕著になったSF映画。しかし、中には、心がホッとするようなファンタジックなSF映画も作られ続けている。そこで今回は、日本で作られた「ゆるふわSF映画」をセレクト。甘く切ない男女の恋愛を描いた作品や、ゆったりと流れる古都の悠久の時間を刻み込んだ作品など、5本を紹介する。第1回。(文・シモ)
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山下敦弘×宮藤官九郎の黄金コンビが送る
はんなり京都タイムトリップ
『1秒先の彼』(2023)
【作品内容】
郵便局の窓口担当のハジメ(岡田将生)は、何をするにもワンテンポ早い男。学生時代には、50メートル走でフライングを連発し、卒業アルバムでは、目を閉じてしまうのが常だった。
そんなある日、ハジメの前に路上ミュージシャンの桜子(福室莉音)が現れる。たちまち恋に落ち、花火大会に行く約束を取り付けるハジメ。しかし、目覚めると、なぜか花火大会はすでに終わってしまっていた。
やがてハジメは、郵便局に毎日やって来るワンテンポ遅いレイカ(清原果耶)が鍵を握っていることに気づく。
【注目ポイント】
チェン・ユーシュン監督の台湾映画『1秒先の彼女』を男女を逆転させてリメイクした作品。公開当時は『カラオケ行こ!』(2024)の山下敦弘(監督)と『不適切にもほどがある!』(TBS系、2024)の宮藤官九郎(脚本)という黄金タッグが話題を呼んだ。
あらすじからもわかるように、本作はいわゆる「タイムリープ」ものだ。しかし、SFものにありがちなド派手な展開はほとんどなく、物語自体はハジメの恋愛模様を中心に地味に進んでいく。
とはいえ、見どころがないわけではない。とりわけ印象的なのは、舞台となる京都の「はんなり」とした世界観だろう。京都府立植物園が醸し出すのどかな雰囲気や、京都鴨川のゆるやかな川の流れは、原作の舞台である台湾と似たゆったりとした世界観を作り出している。
特に私が印象に残っているのは、ハジメと桜子の初デートのシーンで登場する京都府立植物園のバラ園だろう。チェリッシュの楽曲「なのにあなたは京都へゆくの」をバックに桜子をお姫様だっこしたハジメが駆け抜けていく描写には、思わず顔が綻んでしまう。
また、カセットデッキや扇風機、フレッドペリーのポロシャツ、パピコといったレトロ感満載のアイテムの数々も、本作の世界観によく馴染んでいる(ちなみに、ハジメの自宅のシーンは、京都の老舗「山中油店」保有の京町家で撮影されたという)。
本作の鑑賞後、無性に京都に行きたくなったのは私だけだろうか。
(文・シモ)
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【了】