史上最も視聴者を困惑させた大河ドラマは? 伝説の迷場面(2)無理がある展開もあったけど…高視聴率の理由は?

text by 阿部早苗

NHK大河ドラマといえば、1年間という長期に渡って主人公の人生を濃密に描く歴史大作。とはいえ、どんなに素晴らしい作品にも「制作上の都合」というものは存在する。そこで、今回は大河ドラマにおけるツッコミどころを5つご紹介。少なからずの視聴者が違和感を覚えたであろうポイントを踏まえて解説する。第2回。(文・阿部早苗)

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大河ドラマ史上、ここまでの年齢ギャップは初めて?

『江~姫たちの戦国~』(2011)

上野樹里
上野樹里【Getty Images】

脚本:田渕久美子
キャスト:上野樹里、AKIRA、朝倉あき、芦田愛菜、伊佐山ひろ子、石坂浩二、和泉ちぬ、和泉元彌、市村正親、大竹しのぶ

【作品内容】

 織田信長の妹・お市の方を母に持つ浅井三姉妹の末娘・江(上野樹里)。徳川二代将軍・秀忠の正室となり、三代将軍・家光を生んだ彼女の波乱に満ちた生涯を、戦国時代の動乱と共に、女性の視点から描いた物語。

【注目ポイント】

 戦国時代から江戸時代初期にかけての波乱の歴史を描いた『江(ごう)~姫たちの戦国~』(2011)。主人公である江(ごう)の生涯を中心に描いた物語。上野樹里演じる江を主人公に、江の姉である茶々を宮沢りえ、江のもう一人の姉である初を水川あさみが演じ、大河ならではの豪華キャストが名を連ねた。

 物語は、戦国時代から徳川時代へと移行する過程を描き、江が家族とともにどのように時代の波を乗り越えていくかを中心に展開。また、豊臣秀吉(岸谷五朗)、織田信長(豊川悦司)など、戦国時代の重要人物たちも続々と登場し、その躍動ぶりで視聴者の目線を釘づけにした。

 大河ドラマの成功の鍵を握るのはキャスティングだ。序盤では主人公の幼年期を描くのが定石だが、その間は子役を使うのがセオリーではある。ところが、子役を起用せずに大人の役者がそのまま幼少期を演じることで、視聴者が違和感を抱いてしまうパターンも中にはある。本作もそうだった。

 茶々と初の子供時代を子役が担うのに対し、当時24歳だった上野樹里だけが唯一、6歳の江をそのまま演じた。三姉妹全員を大人が演じたならともかく、末っ子の江のみが大人ではどうしても画面上、浮いてしまう。その違和感は到底ぬぐいきれるものではない。またこの作品では、上野の代表作であるドラマ『のだめカンタービレ』(2006、フジテレビ系)の主人公・のだめの印象が抜けきらず、「のだめにしか見えない」という声も少なからずあった。

 とはいえ、単にそれだけであれば「いつもの大河」と言えないこともない。

 本作最大のツッコミどころは、いくつもの歴史的大事件に子ども時代の江を強引に関わらせた点にある。例えば、本能寺の変では徳川家康と伊賀越えをしたと思えば、明智光秀に何故謀反を起こしたのか問いつめる。終いには、清洲会議にまで乱入するのだ。ドラマチックで見応えはあるものの、史実を知っている人からすると、少々無理があると思える展開である。

 とはいえ、平均視聴率は17.7%と高視聴率だった。ネットでは「ファンタジー大河」などと囁かれながらも史実と異なる展開は先が読めず、大河を観ない年代までもを引きつけたことも事実。従来の戦国大河とは異なり、戦よりも人間ドラマを重視した本作は、男社会の戦乱の世に翻弄される女性たちの運命に焦点を当てたことで、後年の『光る君へ』(2024)にもつながる、新たな時代を切り拓いた大河ドラマだった。

(文・阿部早苗)

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【了】

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