絶望感が半端ない…もっとも憂鬱な日本の恋愛映画は?(5)カップルで観たら絶対に別れる? ある意味危険な名作

text by 村松健太郎

古今東西、恋愛には喜びと悲しみがつきものだ。華やかで心躍るような時間がある一方で、恋破れたときの悲しさは、生涯忘れがたい傷として脳裏に刻まれる。そこで今回は、そんな恋愛の負の側面を描いた邦画を紹介。なお、一部の紹介には結末のネタバレを含むため、お読みいただく際にはくれぐれもご注意いただきたい。第5回。(文・村松健太郎)

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「カップルで観たら別れる映画」の定番

『花束みたいな恋をした』(2021)

有村架純
有村架純【Getty Images】

監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
キャスト:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫

【作品内容】

 終電を逃したことがきっかけで知り合った麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。趣味も合い、価値観も合う二人は同棲生活を始める。少しずつ大人になっていく二人は将来のために就職を決めるが…。

【注目ポイント】

「憂鬱な日本の恋愛映画」というテーマでこの作品を選ぶとは、意外なチョイスかと思われかもしれない。しかし、“花束みたいな運命の恋”をした二人が破局に向かう過程を丁寧に描いた本作の白眉は、“恋愛の負の部分”を赤裸々に描いているところにある。お互いを想い合って結ばれた二人は、社会に出るや、生活リズムに齟齬が生じ、価値観の違いが浮き彫りになるのだ。

 社会人になって能率主義を叩きこまれた麦は、家でため息ばかりつくようになり、映画をたしなむ余裕もなく、スマホゲームに現を抜かすようになる。一方の絹も、就職をきっかっけに、麦とは異なる価値観を持つ男性の存在を知り、視野がグッと広がると同時に、麦にそっこんだった日々が遠ざかっていく。

 倦怠期のカップルを描いた映画…と一口で括るのが憚れるほど、本作では、一組のカップルの心が離れていく過程が高解像度で描かれている。それによって、思い出したくもない「イタい記憶」を喚起され、憂鬱な気持ちになった人も少なくないだろう。そんなこともあり、ネットでは「カップルで観たら別れる映画」の定番として名前が挙がることも多い。

 それは本作の描写があまりにも生々しく、リアルだからだろう。付き合いたての、のぼせたカップルの熱を冷ますだけのパワーがこの映画にはあるのだ。 

(文・村松健太郎)

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【了】

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