史上最も「胸糞が悪い恋愛映画」は? 残酷なロマンス(5)束の間の恋は実らず…世界騒然のバッドエンドは?
恋愛と一口に言っても華やかな側面ばかりではない。経験してきた方なら言わずもがなだが、やはりそこには影もある。今回はそんな恋愛の負の部分を濃厚に描いた恋愛映画の傑作をご紹介。珠玉の海外映画を5本セレクトした。第5回。(文・村松健太郎)
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「悪のカリスマ」の哀しき顛末
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(2024)
監督:トッド・フィリップス
脚本:スコット・シルヴァー、トッド・フィリップス
キャスト:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ブレンダン・グリーソン、キャサリン・キーナー、ザジー・ビーツ
【注目ポイント】
全世界で大ヒットを記録し、ヴェネツィア国際映画祭やアカデミー賞で数々の賞を受賞した映画『ジョーカー』(2019)。ホアキン・フェニックス演じる主人公アーサー・ジョーカーの狂気が多くの映画ファンの心をつかんだのは記憶に新しい。
しかしそんな『ジョーカー』ファンたちに冷や水を浴びせる形になったのが、2024年公開の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だ。
タイトルの「フォリア・ドゥ(Folie à Deux)」はフランス語で「二人狂い」という意味。一人の妄想が拡散し、複数人で同じ妄想を共有する精神状態を指している。とはいえ、本作では、「二人狂い」が崩壊し、ジョーカーの「一人狂い」へと変容していく様子を描く。そんな本作は、アーサーとハーレイクインとの心の交流を描いた恋愛映画でもある。
前作の凶行により、アーカム州立病院に収容されたアーサーは、音楽療法を受ける中でハーレイ・“リー”・クインゼル(演じているのはなんと稀代の歌姫レディー・ガガ!)と邂逅。2人は看守の目を結んで逢瀬を重ね、次第に深く結ばれていく。
そんな中、アーサーの裁判も進行。2日目には弁護士を解雇し、アーサー自ら自身の弁護を担当する。しかし、自らの行動に責任を感じたアーサーが、裁判中に「ジョーカーはいない」と発言。徐々にリーの心は離れていってしまう。かつて、「悪のカリスマ」という仮面を被ることで、世間をあっと言わせたジョーカーは、自らその仮面を脱ぎ捨てたのだ。
そして、もはやジョーカーではなくなった彼には、相応の「報い」が待っていた。新しいジョーカーを名乗る若い受刑者から腹部を刺されるのだ。消えゆく意識の中で、リーとのステージを夢想するジョーカー。その顔からかつての「悪のカリスマ」の面影が消えていたのは言うまでもない。
(文・村松健太郎)
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【了】