実は低予算だった大ヒット日本映画は? コスパ最強の傑作(3)2分のループを繰り返す…大バズりの理由は?
映画製作には莫大な費用が掛かる。しかし、人の心を掴む作品は必ずしもお金が掛かっているわけではない。今回は、低予算にも関わらず、製作費を上回る興行収入を叩き出し、多方面から高く評価された日本映画を5本セレクト。作品の魅力を解説する。第3回。(文・編集部)
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独創的なアイデアと巧みな脚本で魅せるタイムループ映画
『リバー、流れないでよ』(2023)
監督:山口淳太
キャスト:藤谷理子、永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成、鳥越裕貴、早織、久保史緒里、本上まなみ、近藤芳正
【作品内容】
京都・貴船の老舗旅館「ふじや」で働くミコトは、2分ごとに時間が巻き戻るタイムループに巻き込まれる。宿泊客や仲間たちと共に原因究明に挑む中、ミコトは複雑な心境でいた。
【注目ポイント】
『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半タイムマシンブルース』などの脚本を手がけた上田誠率いる人気劇団「ヨーロッパ企画」制作のオリジナル長編映画第2弾となった『リバー、流れないでよ』。低予算ながらも独創的なアイデアと巧みな脚本で注目を集めた作品である。
京都・貴船の老舗旅館「ふじや」を舞台に、2分間のタイムループに巻き込まれた人々の群像劇。物語は、仲居のミコトが貴船川のほとりに佇むシーンから始まるのだが、2分後には再び同じ場所に立っており、旅館の従業員や宿泊客も同様に、2分間のループに閉じ込められていることに気づく。
ロケは貴船神社と料理旅館「ふじや」の全面協力で行われ、ストーリーは2分のループを繰り返すという展開。SF設定ではあるものの、CGなどを使用しておらず、登場人物が必死にループから抜け出そうとする姿とドタバタ演出がとにかく秀逸。予算をかけずに面白さを生み出すためのアイデアが至る所に散りばめられている。
不運にも10年に1度と呼ばれる最強寒波直撃による豪雪によって一時期は撮影中止に追い込まれ予算が足りなくなったことから、クラウドファンディングによって無事に完成した本作。「低予算映画として最高の出来だった」「低予算でもアイデア勝負の良作」とSNSで口コミが広がり、若い世代を中心に支持を集めた。
海外の映画祭でも上映され、多くの賞を受賞した本作。ちなみにヨーロッパ企画は前作の『ドロステのはてで僕ら』(2020)でも世界27ヵ国53の映画祭で上映され、23もの賞を受賞している。次にどんな作品を手がけるのか。心して待ちたい。
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