まさかのクビ…? 続編で消えた映画の人気キャラ(5)”大人の事情”が渦巻く…姿を消した名悪役の真相とは?

text by 編集部

周知の通り、映画は、監督や脚本家の意向のみで制作されるわけではない。作品が劇場で流されるまでには、キャストの許諾や法的問題など、さまざまなしがらみをクリアしなければならない。そこで今回は、シリーズの途中で消えたキャラクターを5名紹介。裏に隠された「大人の事情」まで詳かに解説する。第5回。(文:編集部)

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エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド/『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981)

ドナルド・プレザンス
ドナルド・プレザンス【Getty Images】

監督:ジョン・グレン
脚本:リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン
原作:イアン・フレミング
出演:ロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、ハイアム・トポル、リン=ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー、ジョフリー・キーン、ジェームズ・ビリエ、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マクスウェル

【注目ポイント】

 第1作『007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号』(1962)以来、60年以上の長期にわたり制作されてきた『007』シリーズ。累計興行収入は世界で数十億ドル規模に達し、映画史上最も成功したフランチャイズの一つといわれている。

 そんな本作には、ドクター・ノオやヴィクター・レナーなど、個性豊かな悪役たちが多く登場する。中でも印象的なのは、ジェームズ・ボンドの永遠の宿敵で、世界征服を狙う悪の組織「スペクター(SPECTRE)」の首領でもあるエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドだろう。スキンヘッドに白いペルシャ猫を膝に乗せたその姿は、これまでさまざまな映画でパロディ化されてきた。

 しかし、そんな彼も、一度強制退場の憂き目に遭っている。それが、3代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーアが主演を務める1981年制作のシリーズ12作『007/ユア・アイズ・オンリー』だ。

 本作のアヴァンタイトルでは、車椅子に乗ったブロフェルドと思しき男がボンドの乗ったヘリコプターを遠隔操作で墜落しようと画策。しかし、機転を効かせたボンドがヘリコプターを手動操縦に切り替え、ブロフェルドと思しき男を車椅子ごとピックアップ。そのまま工場の煙突から落としてしまう。

 このシーン、「ブロフェルドの死」としてファンの間では有名なシーンだが、作中では彼がブロフェルドとは一切言及されていない。いったい彼の身に何があったのか。

 実はこの時、『007』シリーズは、熾烈な著作権訴訟合戦の渦中にあった。原作者のイアン・フレミングがプロデューサーのケヴィン・マクローリーに内緒で、映画の原案を『サンダーボール作戦』として小説化してしまったのだ。これに激怒したマクローリーらはフレミングを提訴。さらに制作会社の親会社であるダンジャックに対しても、『サンダーボール作戦』で創案されたキャラクターであるブロフェルドの著作権をめぐり、裁判を起こしていたのだ。

 なお、ブロフェルドが再び「スペクター」の首領として登場するのは2015年の『007/スペクター』でのこと。2006年にマクローリーが死去しダンジャックと遺族が和解交渉して実現したという。

(文・編集部)

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