日本映画史上もっとも面白い「創作」をテーマにした作品は?(5)市場規模は約3兆円…アニメ業界の裏側とは?

text by 田中稲

作品を生み出すプロセスと職人の情熱が描かれる映画は、まるで社会見学。普段は何気なく見ている作品が、実は気が遠くなるような作業と努力と工夫によって生まれている。それを知れば、世界はもっと愛おしくなり、自分も何か作りたくなる。今回は、様々なジャンルの「創造の現場」をテーマにしたモノづくり映画を5本ご紹介。第5回。(文・田中稲)

——————————

アニメは、もう1つの世界作り

『ハケンアニメ!』(2022)

吉岡里帆
吉岡里帆【Getty Images】

原作:辻村深月
監督:吉野耕平 
脚本:政池洋佑
キャスト:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子、工藤阿須加、小野花梨、高野麻里佳、古館寛治、前野朋哉

【作品内容】

 地方公務員からアニメ業界に転身した新人監督の斎藤瞳(吉岡里帆)は、デビュー作『サウンドバック 奏の石』で、現在崖っぷちのスター監督・王子千晴(中村倫也)と争うことに。「覇権(ハケン)」と呼ばれる称号を手にするため奮闘するのだが、次々と難題が襲う。

【注目ポイント】

 世界に名を馳せ、その市場規模は3兆円越え(2023年度)と、過去最高を記録し続ける日本のアニメ産業。覇権(=ハケン)とは、クール及び1年間の売り上げ1位、つまりテッペンの作品のことである。

 ハケンを狙う新人監督・瞳を演じる吉岡里帆の熱演で、こちらまで胃が痛くなる。そして驚く。やることが多すぎる、アニメって!!

 コンテ撮り、作画打ち合わせ、美術・CG打ち合わせ、撮影etc、アテレコ…。映画では、その分担作業が細やかに描かれており、息がつまるような切迫感が押し寄せる。

 時間が足りないなか、クセモノの職人たちによってつくられた、美しくもバラバラの風景が、これまたクセモノのまとめ役たちによって一つ一つ重なり、宣伝され、世の中に広まっていく――。

 リアルではありえないことが展開されるアニメ世界に、救われる人は多い。そして、救われた人のなかから、次の覇権を狙うクリエイターが出てくる。

『運命戦線リデルライト』のプロデューサー・有科香屋子(尾野真千子)のセリフ、

「監督って本当にすごい。世界をまるごと創る神様みたいじゃないですか」は、まさに。

 でも、神様はひとりでは世界を創れない、ということを、瞳や王子観てを痛感する。伝えるって、本当に難しい。

 アニメに限らず、クリエイターの出発点は「伝われ!」という願いなのではないか。

(文・田中稲)

【関連記事】
日本映画史上もっとも面白い「創作」をテーマにした作品は?(1)
日本映画史上もっとも面白い「創作」をテーマにした作品は?(2)
日本映画史上もっとも面白い「創作」をテーマにした作品は?(全紹介)

【了】

error: Content is protected !!