オチが変わってる…史上最高の「原作と違う結末」日本映画5選(1)原作は、映画版よりも意地が悪いラスト?
同じ物語でも、文字で読む結末と映像で観るラストはこんなにも違う――。心の奥を揺さぶる衝撃、思いがけない温もり、突き放すような冷淡さ。原作と映画、それぞれが描く「最後の一手」に込められた意味を掘り下げながら、物語に秘められたもう一つの真実へと迫る。第1回。(文・阿部早苗)
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映画よりも意地の悪い原作のラスト
『告白』(2010)
監督・脚本:中島哲也
原作:湊かなえ
キャスト:松たか子、岡田将生、木村佳乃、橋本愛、芦田愛菜、のん
【作品情報】
中学1年B組の担任を務める女性教師・森口(松たか子)は、最愛の娘を学校のプールで失う。警察はその死を事故と判断するが、学年末の終業式の日、森口は生徒たちに向かって「犯人はこのクラスの中にいる」と衝撃の告白をする。
【注目ポイント】
湊かなえの長編デビュー小説を原作とした映画『告白』(2010)。中島哲也監督による鮮烈な内容と映像美が特徴的で、第34回日本アカデミー賞では4冠に輝き、日本国内のみならず海外でも高い評価を得て大ヒットを記録した作品である。
娘を殺された中学校教師・森口悠子の復讐劇を描いている本作。原作では、複数の登場人物の独白を通して事件の真相やそれぞれの心の闇が多角的に描かかれている。また、犯人の一人である少年A(渡辺修哉)の歪んだ人格を作り上げた要因にも焦点が当てられている。
物語の核心は、娘を殺した犯人に対する森口の復讐であるも、映画と原作ではラストのセリフが異なっており、その違いがそれぞれの結末に独自の余韻を残しているといえるだろう。
映画では、少年Aが学校に仕掛けた爆弾が実は彼の母親のもとに移動されており、爆発したことが示唆される。そしてその描写とともに森口は少年Aに向かって「これがあなたの更生の第一歩です」と静かに告げ、「なーんてね」と言って幕を閉じる。
しかし、原作ではこの「なーんてね」というセリフはなく「あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?」で終わるのだ。ゆえに、森口の復讐に対する冷酷さと憎しみが強く感じる展開になっている。
映画は原作の骨子を活かしつつも、映画ならではの表現方法や構成によって、異なる印象を与える作品となっているといえるだろう。
(文・阿部早苗)
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【了】