最も復活してほしい“引退した女優”は? 消えた天才(4)26歳の若さで引退…知る人ぞ知る”名女優”とは?
名作に花を添える女優。観客はその艶やかな魅力に心を奪われるが、「花は七日」というように、美しいものほど盛りは短いものだ。同様に、女優の散り際ほど儚いものはない…。そこで今回は、惜しまれつつ芸能界を引退した女優を5人セレクトしてご紹介する。第4回。(文・野原まりこ)
萩原みのり
映画『佐々木、イン、マイマイン』(2020)や、若葉竜也主演・今泉力哉監督による『街の上で』(2020)など、映画ファンの心を掴む話題作でヒロインを務めてきた実力派女優・萩原みのり。彼女はまさに、“知る人ぞ知る”名女優だ。
15歳で女優としてのキャリアをスタートさせて以来、映画、ドラマ、CMと映像作品を中心に活躍してきた萩原だが、その魅力の本質は、どこか“普通っぽい”と感じさせる空気感にあるだろう。この表現には誤解を招く余地があるかもしれないが、むしろ最大級の賛辞として捉えてほしい。
『佐々木、イン、マイマイン』や『街の上で』といった作品は、邦画の魅力を凝縮したような、“日常の中に潜む違和感”を繊細に描き出す作品である。萩原は、そんな世界観にまるで呼吸するように自然に溶け込んでいく。しかし、その“普通らしさ”の奥底には、じんわりとした黒い塊のような不穏さや、得体の知れない引力が潜んでおり、それが作品全体に静かな緊張感を与えている。彼女の存在は、ただ映っているだけで画面に深みを生む稀有な力を持っていた。
しかしながら、映画監督・内山拓也との結婚を機に、26歳という若さで芸能界からの引退を発表。その潔い決断は、多くの映画ファンにとって衝撃であり、時に失望でもあったかもしれない。だが、その静かで確固たる幕引きこそが、萩原みのりという女優を“伝説”へと昇華させる所以なのかもしれない。
(文・野原まりこ)
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