大河ドラマ『べらぼう』前半戦で最も良かったキャストは?(4)タダ者じゃない気迫と妻への愛情で涙を誘ったのは?
text by 苫とり子
横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第一章の名シーンを振り返り、もっとも良かった俳優5選をお届けする。第4回。(文・苫とり子)
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人間味あふれる演技で涙を誘った鳥山検校(市原隼人)
鳥山検校(市原隼人)の元に嫁ぎ、瀬以と名を改めた瀬川(小芝風花)。だが、2人の夫婦生活は長くは続かず、当道座の取り締まりで鳥山は財産を没収され、瀬川も捕らえられてしまう。現代の価格にして1億4000万円で瀬川を落籍した鳥山。唯一残る資産として、瀬川をどこかへ売り飛ばす可能性も十分にあった。ところが、鳥山は瀬川に離縁を申し出でる。
高利貸しで財を成した鳥山は目が見えないこともあり、お金でしか愛を表現する術を持たなかった。しかし、人の心まではお金で買うことができず、結婚後も瀬川は“蔦重“こと蔦屋重三郎(横浜流星)に想いを寄せたまま。その苦しみに耐えかね、蔦重を亡き者にしようとしたことも。
けれど、皮肉にも財産を奪われたことで、鳥山には瀬川への愛だけが残った。その愛で瀬川を解放した鳥山。背中越しに「私はほんに幸せな妻でございました!」という瀬川の言葉を聞きながら、優しい微笑みを浮かべる姿が涙を誘った。鳥山は場を圧倒するほどの気迫、他人の心の機微を容易く読み取る力を持ち、当初は恐ろしさを感じていた人も多いだろう。そこからじわじわと人間味が滲み出てくる市原隼人の名演が素晴らしかった。
(文・苫とり子)
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