ラスト15分で全てがひっくり返る映画は? 衝撃の結末(1)感動が台無し…なのに余韻が残る不思議な終幕とは?
人生の再生、愛の幻影、疑念と信頼、そして心の深淵──。一見すると心温まる人間ドラマやミステリアスなスリラーが、ラストの数分で静かに、あるいは衝撃的に姿を変える。今回紹介する5本の映画は、観る者の予想を裏切り、その感情に深く揺さぶりを与える傑作ばかりだ。“すべてを失ってから始まる何か”を描いた、記憶に残る映画体験をお届けする。第1回。
※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。(文・ニャンコ)
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強烈な喪失感と余韻を残す逸品
『マッチスティック・メン』(2003)
監督:リドリー・スコット
脚本:ニコラス・グリフィン、テッド・グリフィン
原作:エリック・ガルシア
出演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン
【作品内容】
重度の潔癖症を抱える凄腕の詐欺師ロイ・ウォラー(ニコラス・ケイジ)は、元妻が一人で育ててきた14歳の娘アンジェラ(アリソン・ローマン)と初めて対面する。明るく好奇心旺盛なアンジェラは、やがてロイの仕事に興味を示し、詐欺の技術を教えてほしいと頼み込む。
【注目ポイント】
リドリー・スコット監督による映画『マッチスティック・メン』は、詐欺師として生きてきた男が「家族」との出会いを通して人間性を取り戻していく――かのように見せかけながら、ラストで観客の期待を裏切る巧妙な心理ドラマである。
潔癖症とパニック障害に悩まされながらも、日々詐欺を働くロイ。そんな彼の前に突如現れた娘・アンジェラとのぎこちない交流は、次第に温もりを帯び、ロイの内面にも少しずつ変化が現れ始める。やがて、彼はアンジェラに詐欺のテクニックさえ伝授しながら、自分の人生を見つめ直し、新たな一歩を踏み出そうとする――そんな感動的な父娘の物語が展開されていく。
ところが、物語は終盤のわずか15分で一転する。アンジェラは実の娘などではなく、すべてはロイの相棒・フランク(サム・ロックウェル)が仕掛けた大がかりな詐欺だったのだ。ロイの精神状態や「家族を持ちたい」という渇望までも利用され、彼は財産のすべてを奪われてしまう。
最も信じた相手に裏切られるという事実は、観る者に強烈な喪失感を残す。しかし、ロイはそのすべてを受け入れ、詐欺師としての人生に終止符を打つという選択をする。
人を騙すことに人生を費やしてきた男が、最後に騙されることで本当の意味で人間らしさを取り戻す――そんな皮肉でありながらも美しい物語が、観る者の心を静かに打つ。すべてを失ったはずなのに、どこか温かな希望を感じさせてくれる、余韻の残る一作である。
(文・ニャンコ)
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【了】