民放ドラマ史上最も”胸糞が悪かった”名作は?(5)異例のモザイクが話題に..えげつない演技を見せた男は?

text by 西本沙織

この世には、説明がつかない現象、“超能力”と呼ばれる力や”サイコパス”と呼ばれる人種など、常人には理解し難いモノが存在する。それらを解明することは現段階では難しい。だからこそ我々は“特殊能力”に強く惹かれてしまうのだ…。そこで今回は、不可解な出来事をテーマとした猟奇系ドラマを5本厳選してご紹介する。(文・西本沙織)

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地上波ギリギリのハードサスペンス

『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系、2019)

唐沢寿明
唐沢寿明【Getty Images】

原作:『Voice』(Studio Dragon Corporation & CJ ENM Corporation 製作)
脚本:浜田秀哉
演出:大谷太郎、久保田充、後藤庸介
監修:石坂隆昌(警察)、堀エリカ(医療・法医学)
出演:唐沢寿明、真木よう子、増田貴久

【作品内容】

 検挙率トップを誇る港東署強行犯一係の係長・樋口彰吾(唐沢寿明)は、3年前に妻・未希(菊池桃子)を謎の殺人鬼に殺されてからというもの、落ちぶれた日々を過ごしていた。

 そんななか、未希が殺害される起因となった“コールバック”を行った当時の緊急指令室員・橘ひかり(真木よう子)が新部署「ECU(Emergency Call Unit)」立ち上げ、樋口は現場リーダーとして招集されることに。衝突しながらも、ともに協力して事件捜査に乗り出していく。

【注目ポイント】

 緊急指令室を舞台に展開する『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)は、手に汗握るタイムリミットサスペンスである。本作は、現在シーズン4まで制作されている韓国の大ヒットドラマ『ボイス』のリメイク版。ハードすぎると話題の原作のエッセンスを忠実に抽出し、限られた話数のなかで見事に再構築した。

 オリジナル版では、ケーブルテレビ局ならではの容赦ない暴虐シーンを含みつつ、決定的な描写にはモザイク処理が施されている。それほどまでにおぞましいゴア描写を、本作では地上波ギリギリまで攻めた表現で映像化。凄惨な死体に顔を歪めてしまうのはもちろんのこと、サイコパスたちの凶悪で暴力的な犯行は、恐ろしさを通りこしてもはや痛みすら感じる。

 それはひとえに、“カチカチ野郎”を演じた伊勢谷友介、“白塗り野郎”に扮した安藤政信をはじめとした、キラー役の俳優陣の高い演技力の賜物でもあるのだが。ミステリアスで狂気的…そのえげつないほどの怪演に、ドラマを観終わってもしばらく彼らに役の残像をみた人も多かったのではないのだろうか。

 ひりつく攻防戦も、本作の見どころのひとつ。とくに、シーズン1の女子大生連続殺人事件、児童虐待による傷害事件は、寿命が縮まりそうになるほどのスリリングさ。リメイクドラマであることや過激さを果敢に表現したことなど、あらゆる点から鑑みても、本作はかなりの挑戦的な作品だったことがうかがえる。オリジナルに引けを取らない意欲作に、ぜひとも没頭してみてほしい。

(文・西本沙織)

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