海外で絶賛された日本の戦争映画は? 壮絶な傑作(5)トラウマ描写のオンパレード…世界で評価される理由は?
2025年は戦後80年という節目の年となる。未だに世界では戦争が行われている国々があり、その悲惨な状況には目を覆いたくなるほどだ。また、戦争は人ごとではなく、自分たちの身にも起こる危機感を抱かなければ、平和を維持するのは難しいだろう。そこで、今回は海外での評価が高い日本の戦争映画を5本紹介する。第5回。(文・阿部早苗)
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『火垂るの墓』
監督:高畑勲
脚本:高畑勲
出演者:辰巳努、白石綾乃
【作品内容】
昭和20年夏、父の出征中に空襲で家を失い、母も亡くした14歳の清太と4歳の節子。親戚の家に身を寄せるが冷たく扱われ、清太は節子を連れて家を出る。防空壕で2人だけの生活を始めるが、戦争の厳しさが兄妹を次第に追い詰めていく。
【注目ポイント】
1988年に公開された『火垂るの墓』は、高畑勲監督によるスタジオジブリ作品であり、野坂昭如の同名小説を原作としている。物語の舞台は、第二次世界大戦末期の神戸。空襲によって家を失い、母を亡くした14歳の兄・清太と4歳の妹・節子が、戦争の混乱の中で懸命に生きようとする姿を描いている。
美しく繊細なアニメーションとは対照的に描かれる過酷な現実。そのギャップが、観る者の心に深く突き刺さる。本作には、感動という言葉では言い表せない、静かな絶望と祈りが満ちている。単なる戦争映画ではなく、戦争を子どもたちの目線から描いたことで、国内外に大きな衝撃と共感を与えたといえるだろう。
1988年には第1回モスクワ児童青少年国際映画祭でグランプリを受賞し、さらにシカゴ国際児童映画祭では最優秀アニメーション映画賞を受賞。加えて、子どもの権利部門で第1位に選ばれるなど、世界各国の映画祭において栄誉に輝いている。
その評価は映画祭にとどまらない。イギリスのカルチャー誌『Time Out』が映画監督クエンティン・タランティーノとともに選出した「第二次世界大戦映画ベスト50」では第10位にランクイン。また、米ハリウッド・リポーター誌の映画批評家ジョン・デフォーが選ぶ「大人向けアニメ映画ベスト10」において第7位に選出されるなど、ジャンルや国境を超えて高い評価を受けている。
そして終戦から80年という節目の今年(2025年)に本作が7年ぶりに地上波で放送されることが決定した。観るには心の準備が必要とされるこの作品は、決して気軽に楽しめる娯楽映画ではない。だが、それでも観るべき価値があるのは、私たちが過去から学び、次の世代へと記憶を受け継ぐために決して忘れてはならないものが描かれているからである。
(文・阿部早苗)
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