史上最も「脚本がスゴい」映画は? 識者が選ぶ名作(3)究極の面白さ…大人も子供も没頭して観られる理由は?

世の中には名作と呼ばれる作品が多く存在する。そんな名作が生まれるには、もちろんキャスティングや俳優の演技力、監督の演出などあらゆる要素が組み合わさることで誕生するものだが、やはりその中でも脚本は命だ。今回は、素晴らしい脚本の映画を5本紹介。その凄さを徹底解明する。第3回。(文・ニコ・トスカーニ)

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『トイ・ストーリー』シリーズ

映画『トイ・ストーリー』でお馴染みウッディとバズ・ライトイヤー
映画『トイ・ストーリー』でお馴染みウッディとバズ・ライトイヤー【Getty Images】

監督:ジョン・ラセター
脚本:ジョス・ウィードン、アンドリュー・スタントン、ジョエル・コーエン、アレック・ソコロウ
出演者:トム・ハンクス、ティム・アレン

【注目ポイント】

 『トイ・ストーリー』シリーズの脚本は、複数の脚本家によって書かれている。「集合知の究極系」とも言える逸品である。笑いがあり、涙があり、子供でもプロットが十分理解できるのはもちろん、大人も物語に没頭できる。

 特にアンディが青年に成長しおもちゃたちとの関係に大きな変化が訪れる『トイ・ストーリー3』(2010)は、子供よりも既におもちゃとの別れを経験している大人に刺さる内容だろう。シリーズものでありながら、初見の観客に物語を理解するうえで必要な前提知識を求めない作りになっているのも素晴らしい。

 筆者は一番最初に『トイ・ストーリー3』を見たが全く問題なく楽しめた。数分のオープニングシークエンスでおもちゃとアンディ少年の関係を簡潔に説明している。脚本の優れた作品が多いピクサーアニメの中でも、同作のオープニングに匹敵する作品は、『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)くらいしか思い浮かばない。

 複数人が知恵を出し合ったことで生まれる集合知で、複数人の異なる感性の脚本家がアイディアを出し合ったからこそ実現できる万人向けの理想的な脚本。1人の書き手が作家性を発揮するのではなく、複数人で意見を出し合ってバランスの良い表現を探る。チームで執筆した脚本の成功例の一つだろう。

(文・ニコ・トスカーニ)

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【了】

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