かつては確執の噂も…実の親子が共演している映画(5)15歳になるまで接点なし…距離のあった父子のドラマ

text by 阿部早苗

フィクションの中で生まれる、ノンフィクション–。映画は時として、想像を超えた瞬間を映し出す。スクリーンの中で対峙する人間同士が本物の親子であったとき、そのリアルな関係によって、物語とは別の人間ドラマが生まれるのだ。そこで今回は、実の親子が共演している洋画を5本セレクトしてご紹介する。第5回。(文・阿部早苗)

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ドナルド・サザーランド×キーファー・サザーランド
『ワイルドガン』(2015)

ドナルド・サザーランド×キーファー・サザーランド
ドナルド・サザーランド×キーファー・サザーランド【Getty Images】

監督:ジョン・カサール
脚本:ブラッド・ミルマン
出演:キーファー・サザーランド、ドナルド・サザーランド、ブライアン・コックス、マイケル・ウィンコット、デミ・ムーア

【作品内容】

 南北戦争後、西部のガンマンとして名をはせたジョン・ヘンリーは、母の死を機に故郷ワイオミングへ帰郷。銃を捨て新たな人生を望むが、牧師の父は過去を許さず、溝は埋まらない。かつての恋人メアリー・アリスも他の男と結婚していて…。

【注目ポイント】

 西部劇『ワイルドガン』(2015)は、名優ドナルド・サザーランドと、その息子であり人気俳優でもあるキーファー・サザーランドが本格的に親子共演を果たした記念すべき作品である。

 物語の舞台は1872年のワイオミング。南北戦争後、過去を断ち切ろうとする元ガンマンのジョン・ヘンリー・クレイトン(キーファー・サザーランド)が10年ぶりに故郷へ帰郷する。そこで彼は、牧師として静かに暮らす父サミュエル(ドナルド・サザーランド)と再会し、確執を抱えた親子関係を修復しようとする。一方、町は悪徳開拓業者によって揺れており、ジョンは再び銃を取る決断を迫られる。

 本作が特別な意味を持つのは、俳優としてだけでなく実生活でも親子である二人が、初めて本格的に親子役として同じシーンで共演を果たした点にある。過去には『評決のとき』(1996)など同じ作品に出演したことはあったが、親子役として深く関わるシーンは本作が初めてだ。実生活では、キーファーが15歳になるまで父ドナルドとはほとんど接点がなかったことも知られている。

 激しい銃撃戦よりも静かな心理描写と人間関係に重きを置いた西部劇である本作。特にジョンが過去の過ちを父サミュエルに話し涙するシーンや、父の無言の眼差しに込められた想いなど、親子だからこそ生まれる繊細な演技は圧巻であった。

(文・阿部早苗)

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【了】

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