1990年代最高の洋画は? 映画史に燦然と輝く金字塔(2)伝説の殺し屋が蘇る…日本版リメイクも作られた傑作
スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスの出現によって、1980年にはハリウッド映画の娯楽性とクオリティがアップした。一方、90年代には多種多様な作品が登場。この時期のハリウッド映画に思い入れのある人は少なくないのではないか。今回は、1990年代を代表する洋画を5本厳選してご紹介する。第2回。(文・村松健太郎)
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クリント・イーストウッドの最高傑作
『許されざる者』(1992)
監督:クリント・イーストウッド
脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演:クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン、リチャード・ハリス、フランシス・フィッシャー
【作品内容】
1880年、アメリカのワイオミング州のビッグ・ウィスキーという酒場で、2人のカウボーイが娼婦に傷を負わせる事件が発生。カウボーイに懸賞金がかけられた。
今は平和に暮らすかつてのガンマンであるマニー(クリント・イーストウッド)は、子どもたちを養うため、かつての相棒を誘って、ビッグ・ウィスキーに向かう。
【注目ポイント】
テレビドラマや映画の脇役からキャリアをスタートし、『荒野の用心棒』(1964)など、いわゆる“マカロニ・ウエスタン”のヒット作で一躍映画スターとなったクリント・イーストウッド。その後、現代劇『ダーティハリー』シリーズでさらなる人気を得て、アメリカ映画界を代表する“マネーメイキング・スター”としての地位を確立していく。
そして1971年、イーストウッドは、映画『恐怖のメロディ』で監督業に進出。当時はまだ一般的に認知されていなかった「ストーカー」を映画のテーマに取り上げた点でも、先鋭的な試みだった。
そんな彼が“最後の西部劇”と位置づけ、自ら監督・主演を務めたのが、1992年の傑作『許されざる者』である。
本作は、イーストウッドが俳優としての礎を築いた2人の恩人、ドン・シーゲルとセルジオ・レオーネに捧げられた作品でもある。
物語は、かつて“伝説の賞金稼ぎ”と恐れられたウィリアム・マニー(イーストウッド)が、妻の死後は農夫として慎ましく生きていたが、貧困から抜け出すため、再び銃を手にするというもの。旧友ネッド(モーガン・フリーマン)と共に賞金首のかかった町に向かうが、そこは冷酷な保安官リトル・ビル(ジーン・ハックマン)に支配されていた。ハックマンはこの役でアカデミー賞助演男優賞を受賞している。
本作は、その年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、助演男優賞、編集賞の4部門を受賞。長らく賞レースとは縁が薄かったイーストウッドにとって、大きな転機となった。
本作以降、彼は『ミスティック・リバー』(2003)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)、『硫黄島からの手紙』(2006)などで高い評価を受け、アカデミー賞常連の名監督としての地位を確立していく。
なお、『硫黄島からの手紙』で主演を務めた渡辺謙が、2013年に日本リメイク版『許されざる者』(李相日監督)で主演を務めている。舞台を明治初期の蝦夷地に置き換えつつも、物語の展開はオリジナルに忠実であり、西部劇の精神を日本文化の中に巧みに置き換えた意欲作として注目された。
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【了】