名作が意外と多い…? 実の親子が共演している日本映画(3)わずか3分で圧倒される…歌姫の壮絶演技に絶句

text by 阿部早苗

血縁で結ばれた「実の親子」が同じスクリーンに立つ――。それは俳優としての積み重ねや覚悟が交差する、ある種の“奇跡”のような瞬間でもある。本稿では、邦画の中でも印象的な実の親子共演映画5選を厳選紹介。演技を超えてにじみ出る絆、役を通して交わされる心の会話に、胸を打たれること間違いなし。第3回。(文・阿部早苗)

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3分間のリアルな母子再会が生む魂の説得力

Cocco×KOTO『KOTOKO』(2012)

Cocco&KOTO
Cocco&KOTO【Getty Images】【KOTO公式Instagramより】

監督:塚本晋也
出演:Cocco、塚本晋也、KOTO

【作品内容】

 乳児の息子を女手ひとつで育てねばならないという強迫観念にとらわれ、精神的に不安定になった琴子(Cocco)。次第に奇行が目立つようになり、虐待の疑いを持たれた末、やむなく沖縄の姉に息子を預けることとなるが…。

【注目ポイント】

 塚本晋也監督による映画『KOTOKO』(2012)は、シンガーソングライターCoccoが主演と主題歌を担当し、塚本監督がCoccoにインタビューを重ねて母と子をテーマに描いた作品。

 物語は、乳児の息子を女手ひとつで育てる琴子(Cocco)が、母としての責任感と強迫観念に押しつぶされ、次第に精神の均衡を崩していく姿を追う。現実と幻覚の境界が曖昧になり、奇行を繰り返す琴子はやがて幼児虐待を疑われ、心の限界の果てに、沖縄の姉のもとへ息子の大二郎を預けることになる。

 注目すべきは、ラストに登場する琴子の息子役を、Coccoの実の息子であり現在はモデルとして活動するKOTOが演じている点だ。精神病院に入院中の琴子のもとを面会に訪れた息子は、戸惑う母に近況を語り、そっと折り鶴を渡す。わずか3分足らずのシーンながら、親子のリアルな絆がそのままスクリーンに映し出され、母子のやりとりに圧倒的な説得力を与えている。

 現実と虚構が交錯する中で、Coccoが魂を削るように演じたこの作品は、第68回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で最高賞を受賞し、国内外で高い評価を受けた。Coccoの圧倒的な表現力と、母性の痛みを赤裸々に映し出す本作は、観る者の心を深く揺さぶる一作である。

【著者プロフィール:阿部早苗】

仙台在住のライター。2020年にライターデビュー。これまで東日本大震災での企業活動をまとめた冊子「こころノート」第2弾、プレママ向けフリーペーパーを執筆した他、エンタメニュース、福祉関連記事、GYAOトレンドニュース、地元グルメライターなどWEB媒体を中心に執筆。映画なしでは生きられないほど映画をこよなく愛する。

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