史上もっとも危険な撮影を行った海外映画は?(4)水中で用も足す…一切の妥協を許さない壮絶ロケが生んだ名作

text by 阿部早苗

一歩間違えば命の危険すらあった――。映画はファンタジーだけじゃない。今回紹介するのは、極限の自然や苛酷な条件の中、CGに頼らず魂を削って完成させた洋画5選。俳優とスタッフの執念が作り上げた、リアルが光る映像体験の裏側に迫る。第4回。(文・阿部早苗)

——————————

溺れそう、水中で用も足す…壮絶ロケが生んだ名作

『タイタニック』(1997)

『タイタニック(1997)』(C) 1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
『タイタニック(1997)』(C) 1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

監督:ジェームズ・キャメロン
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼイン

【作品内容】

 タイタニック号の引き上げ作業中に「碧洋のハート」を身につけた女性の絵が発見される。その絵を見た100歳の生存者ローズが現れ、孫娘と共に過去の悲劇と若き日の恋を語り始める。

【注目ポイント】

 ジェームズ・キャメロン監督が手がけた超大作『タイタニック』(1997)。1912年、実際に起きたタイタニック号沈没事故を題材に、船上で出会った上流階級の女性と身分の違う青年との悲恋を描いた物語は過酷な撮影によって完成した作品として有名だ。

 先ず、劇中に登場する沈没船のシーンは実際に北大西洋の海底まで潜水して、沈んだRMSタイタニック号の映像を撮影し、そのまま劇中に使用されている。映画のリアリティは、まさに命懸けの実写撮影から始まっていた。

 そしてメインの撮影はメキシコのバハ・カリフォルニアに建設された巨大スタジオで行われた。ここには右舷部分をほぼ実物大で再現したセットと、1,700万ガロンの水をたたえる巨大水槽が用意され、タイタニック号が沈んでいく壮絶なシーンがリアルに撮影された。

 冷たい海に浮かぶシーンは温水だったというが、撮影は過酷を極めケイト・ウィンスレットは疲労がたまる中、コートがゲートに引っかかって溺れかけるという危険な事故に見舞われた。温水を使用していたとはいえ、水中での長時間の演技は俳優陣の体力を容赦なく奪っていったのだ。

 さらに衝撃的なのは、キャメロン監督が「トイレ休憩禁止」を指示していたというエピソード。1カットに数時間を要することもある現場では集中力を維持するために、レオナルド・ディカプリオやウィンスレットらが水中で用を足さざるを得なかったという。そこには映像に一切の妥協を許さない監督の信念があったといえるだろう。

 他にも、スタントが傾くデッキからの落下シーンで骨折、撮影チームが何者かによる毒物混入事件に巻き込まれるなど制作現場ではまさに命がけの撮影が行われていた。

(文・阿部早苗)

【関連記事】
史上もっとも危険な撮影を行った海外映画は?(1)
史上もっとも危険な撮影を行った海外映画は?(5)
史上もっとも危険な撮影を行った海外映画は?(全紹介)
【了】

error: Content is protected !!