名作が意外と多い…? 実の親子が共演している日本映画(4)俳優として演技をぶつけ合う…哀愁漂う逸品は?
血縁で結ばれた「実の親子」が同じスクリーンに立つ――。それは俳優としての積み重ねや覚悟が交差する、ある種の“奇跡”のような瞬間でもある。本稿では、邦画の中でも印象的な実の親子共演映画5選を厳選紹介。演技を超えてにじみ出る絆、役を通して交わされる心の会話に、胸を打たれること間違いなし。第4回。(文・阿部早苗)
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柄本明×柄本佑『一度も撃ってません』(2020)
監督:阪本順治
脚本:丸山昇一
出演:石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央、柄本明、寛一郎、前田亜季、渋川清彦、小野武彦、柄本佑、濱田マリ、堀部圭亮、淵上泰史、原田麻由
【作品内容】
大都会のバー“Yに現れる”74歳の男・市川(石橋蓮司)は、伝説のヒットマンと噂されるも、実は小説のネタ集めのために依頼を受けては他人に任せる売れない作家。“一度も撃ったことがない”小市民の彼に、浮気を疑う妻と命を狙う本物の殺し屋が迫り、波乱の展開が始まる…。
【注目ポイント】
2020年に公開された映画『一度も撃ってません』は、阪本順治監督によるハードボイルド・コメディ。石橋蓮司が18年ぶりに主演を務めたことで話題となったが、もう一つの注目ポイントは、柄本明と実の息子・柄本佑による親子共演だ。
物語は、引退した74歳の小説家・市川進(石橋蓮司)が、自作のハードボイルド小説を執筆しながらも、周囲を巻き込んで現実と虚構が交錯していく騒動を描きコメディ要素を含みつつも、どこか哀愁漂う人間ドラマが展開される。
柄本明は、裏社会に顔の利く暴力団幹部・連城孝志を演じており、一方の柄本佑は薬の売人・植田順役で登場している。二人が同じ画面に映ることはないものの、物語の異なる場面にそれぞれ重要な役割を持って登場しており、作品の中でしっかりと個性を発揮している。
柄本佑は本作出演について、阪本監督と石橋蓮司のタッグによる新作が決まったと知った際「どんな小さな役でもいいから出演したい」と直談判したという。俳優として、そして一ファンとしての強い思いは実を結び、出演が実現したのだ。さらに父・柄本明との親子共演という、特別なかたちでその願いが叶うこととなった。
また、本作では佐藤浩市と息子の寛一郎も親子共演を果たしており、複数の俳優親子が登場するという点でも異色の作品といえるだろう。
親子でありながら、俳優としてそれぞれの立場から演技をぶつけ合う姿もまた楽しめる作品だ。
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【了】