識者が選ぶ「期待を超えてきた春ドラマ」は? 珠玉のベスト(1)安定の面白さ…一方で賛否両論を呼んだ理由は?
2025年春ドラマを振り返るドラマ座談会を開催。注目度の高い作品を中心に、3名のドラマライターが今期もっとも面白かったドラマを5本選出した。それぞれの魅力を深掘りし、共感ポイントや俳優、脚本の魅力に迫る。ドラマファン必見の座談会レポートをお届け。第1回。(文・編集部)
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脚本のバランスが絶妙…ほんの少し惜しいところも?
『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)
―――お三方から見て、今期特に面白かったドラマを選んでいただければと思います。話題性では『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系/以下『対岸の家事』)が高かったように思いますが、いかがでしたか?
まっつ「『対岸の家事』は万人向けというか、誰かしら経験したり見聞きする事柄がテーマになっているので、これはかなりマスに刺さっている作品ですよね。全体的に観やすかった印象を受けました。今は、専業主婦よりも共働き家庭の方が多いと思うので、主人公の多部未華子さんよりも江口のりこさんに共感した人が多かったんじゃないかな?」
あまの「主人公は多部さんですけど、多部さん側の立場に寄り過ぎず、バランスが絶妙でしたよね。個人的には、田辺桃子さんが演っていた不妊治療の回が良かったです。ああいう事柄も取り上げるところに、誰も取りこぼさないようにしてるんだなと安心感がありました」
―――マスに刺さる作品というところで、あえて、気になった部分などお聞きしてもいいですか?
苫「友人の意見ですが、江口さん演じる礼子のように仕事したいから共働きをしているわけでも、多部さん演じる詩穂のように自ら望んで専業主婦を選んだわけでもなく、自分は旦那さんの稼ぎだけじゃ食べていけないから仕方なく共働きしながら子育てをしているので、どちらにも共感しにくいと言ってました。
働きたいのに働けない、専業主婦も家族のために働いているのに世間からは甘えていると思われてしまう…といった葛藤はわかりやすく共感を呼ぶのかなと思うんですが、友人のような立場の人も多いと思うので、今後はドラマでも取り上げられたら良いですよね」
まっつ「男性目線として気になったのは一ノ瀬ワタルさん演じる虎朗ですね。妻の詩穂が家出してディーン・フジオカさん演じる中谷に家事を教えてもらうシーンで、家事の出来なさっぷりが、いかにも普段家にいない男性のステレオタイプだった」
あまの「言われてみれば、どのドラマも女性の解像度はどんどん上がってきているけど、男性像は確かに数パターンしかない気がしますね。ドラマって女性の視聴者が多いからそういう描写になりがち、という事情もあるのかもしれませんが」
苫「個人的には虎朗はもちろん、礼子に家事や育児を任せっきりにしていた川西賢志郎さん演じる量平の葛藤を通して男性側にも寄り添っていた印象ですが、確かにそういう一面もありましたね。特に虎朗は早くに両親を亡くしているので、もっと家事はできるだろうと思いました(笑)」
【出席者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
【出席者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
【出席者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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